小説

□candy kiss
(慶×幸)
1ページ/5ページ


「どうだい幸村、お腹はもう満足した?」


「はい! ですが、出来ればあと…」







少し恥ずかしそうに言葉を詰まらせる幸村の顔を、慶次は横から覗き込んだ。







「なあに、幸村?」


「あの‥ リンゴ飴が食べたいで御座る。」


「‥リンゴ飴?」







少し目を大きくした慶次の様子に、幸村は慌てて目を逸らした。







「や‥やっぱり子供っぽいで御座ろうか!?」







やはり言うべきではなかったかと、幸村は真っ赤になってしまった顔を俯かせた。
そんな幸村の様子に優しい笑みを浮かべ、慶次はそっと肩を抱き寄せた。







「俺はさ、周りの飴ごとかぶりつくのが好きだなあ。」


「え?」


「幸村は? 幸村はリンゴ飴どうやって食べるのが好き?」


「あ‥ そ‥某は、飴を舐めてからリンゴを頂きまするが…」







「そうなんだ。」と妙に納得している慶次を、幸村は見上げるように見つめていた。







「子供の様だと、呆れないので御座るか?」


「何で? 俺だって好きだよリンゴ飴。幸村はさ、図体のデカい俺が飴好きだって言ったら笑う?」


「そんな事ッ‥」


「だろ? だから気にする事なんかないよ。それに、二人が好きだっていう発見も出来た。」


「慶次殿…」







大した事ではないのかもしれない。けれど慶次の言葉はあたたかく、幸村の心に真っ直ぐ響く。







「じゃあ、買いに行こっか?」







言葉と共に差し出された慶次の大きな手‥
少し恥ずかしさを抱きながら幸村はギュッと握り締めた。





………ー―










「だいぶ、混んで来た様に御座るな。」


「そうだね。もうすぐ花火も始まる時間だし‥ 先まで、人の波が続いているよ。」







慶次はその長身を生かし、通りの先を見ていた。







「‥そうで御座るか…」







自分もその中の一人なのだが、慣れない人混みに幸村は疲労の色を隠せない…







「疲れちゃった?」


「はい‥

あッいえ、大丈夫に御座る!」







無意識に出てしまった言葉を、幸村は慌てて否定した。
今日の祭は自分から誘っているのだ。それを疲れたとは、失礼極まりない話ではないか。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ