Felicita

□自称秩序の風紀委員長
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『−…っ!』


(あれ?車の中? ………。
あー、そうだ思い出した。)


薬の吸った量が少なかったのか早く目が覚めたようだ。いきさつを思い出し自分の状況に溜め息が漏れそうになる。

縛られてはいない。
どうやら後部座席に放り込まれただけらしい。男が2人、運転席と助手席に座っているのが確認できる。


(いくら油断してたとはいってもなぁ〜…。こんなことが九瑠璃と舞流に知られたら怒られるだろうな。また道場にでも通おうかなぁ。)


キキーッ

車の中では下手に動けないので大人しく考え事をしていたらどこかに着いたらしい。男二人が車を降りる気配がする。



「おい、この娘どうするよ。」
「あ?どうせ平和島静雄をシメるまでの囮だろ?縛って、そこら辺に転がしとけばいいだろ。」



(………ムカつく。人を何だと思ってるんだ、こいつらは!)


私は男の1人が頭側のドアを開けて顔を出した瞬間、男の首を思いっきり引っぱって首裏に鉄拳を加えた。



「ガハッ……」

「お、おい!!どうしたっ!?」


『あ゙ぁ〜…、薬がまだ抜けきってないのに立ったから頭が痛くなっちゃったじゃない。どーしてくれんのよ!』


「お、おお、お前は、「君達はさ、誰の許可を得て僕の町で好き勝手しているの?」ひっ、すみまsグファッ…」


『ん?』




気絶したおっさんをどかして車を降りると、後ろで声がした。痛む頭を抑えながら振り向くと、学ランを肩に羽織った吊り目の人が立っていた。



「へぇ、君が沢田の言っていた…」

『? えっと、あの…助けていただきありがとうございました?』

「君、強いの?」

『えっ?』

「だから君、強いのかっtみ〜ど〜り〜、たな〜びく〜 ピッ  …何?」



吊り目の人は何かを呟いたと思ったら、こちらのお礼を無視して話しかけてきた。
今は携帯で誰かと話しているけど、あの着信音…。似合わないなんて言ったら失礼だろうが、いったいこの人は誰なのだろうか。

周りを見回すと廃虚が建っていた。まだ家の周りしか覚えていないので、ここが家から近いのか遠いのかも分かない。



「――分かった。今からそっちに連れてくから。  ピッ


……乗って。」


どうやら電話が終わったらしい。乗ってと指された車はさっきまで私が乗っていた、いや寝かされていた車だ。


(もしかして、敵なんじゃ…)


「ねぇ、早くしてよ。急がないと沢田が煩いんだ。君の従兄の平和島静雄だっけ?そいつも待ってるんだからさ。」

『えっ、シズちゃん!?』



シズちゃんの名前が出た瞬間、反射的に車に乗り込んだ。吊り目の人は気絶している男の1人を手早く縛って車に放り込むと車を出した。


(学ラン着てるのに車の運転してる……ということはコスプレ?でも顔立ちは高校生ぐらいだし、まさか無免許!?!?)


車に乗ったはいいが未だにこの吊り目の人が誰だか分からない。



『…………あの、』

「何?」

『あなたは誰ですか?どうして助けてくれたんですか?』


「僕が君を助けた?ワォ、自意識過剰かい?僕はこの町の秩序だからね、邪魔な奴らを咬み殺しただけだよ。
もしかして君、僕の町に住んでおいて僕のこと知らないの?」

『えぇっと…、、すいません。まだこっちに来てから間もないので。』

「そう。」

『いや、あの、"そう"じゃなくて…』


(何なの、この人!!もの凄く面倒くさい!!)


「着いたよ、降りて。」



どうやら目的地に着いたらしい。吊り目の人は車を降りて、どんどん先へと行ってしまう。


(このマイペースさにだんだんムカついてきた。)


丸い頭を後ろから睨みながら急いで追いかけると、タイミング良くドアが内側から開いた。



ガチャ、

「やぁ那乃葉、待ってたよ。雲雀さん、お疲れ様でした。」

「僕は町の「秩序ですよね、分かってますよ。俺の先輩でもあり、二年にして風紀委員長の雲雀さんのおかげで今日も町は平和です。」…ふん、例の男は車の中だよ。」

『…さ、沢田くん!!!?!?』



中から出てきたのは何故かスーツ姿の沢田くん。沢田くんの言葉からするに、私の先輩でもあるだろう吊りm……雲雀さんを軽くあしらっている。


(というか雲雀さんとやらもそれでいいの!?)


「詳しくは中で説明するから、とりあえず上がってよ。」



なんだか嬉しそうな沢田くんに、ついつい頷いてしまうところだった。この笑顔に騙されてはいけない!とは思いつつも、確かに玄関でずっと立っていても仕方ないのでお邪魔することにした。



『お、お邪魔します!!』






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