06/14の日記
21:21
社長マルコ2
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柄にもなくドキドキしていた。
心臓の音がここまで大きくなるものか、今までこんな経験なんてなかったのだからしょうがないとはいえ、そんな自分が少し可笑しくなってしまった。
襖の向こうには彼女がいた。
ずっと考えていた、どんな顔をして、どんな風に自分に接するのだろうと。
売られるように決まる見合い、断れない縁談、年上の相手、好きでもない男。
どれをとっても悲劇だろう。
ただ、誰もが憧れるほどの金はある。
その金で彼女を買うわけだが、まんざら悪い話でもないだろう。
そう思って襖を開けると、そこに彼女は座っていた。
弾むように顔を上げたその目には、目一杯の涙を溜めて。
彼女はにっこりと笑ったのだ。
「式場もドレスも好きなとこ選んどけよい。融資は言い値でしてやるよい、それで問題ねぇんだろう?」
「あ、ありがとうございます!」
「おいマルコ!」
「行くよい、サッチ。次の会議だ」
吐き捨てるようにそう言うと、ものの5分もしないうちに席を立った。
覚悟していたのに、目の前の彼女は間違いなく『あの彼女』だったのに。
あの目一杯の涙はショックだった。
「当たり前か…」
ぐしゃりと頭を掻いたら、眉間に皺が寄る。
それでもやめてやるなんて選択肢を選ぶことはない。
力づくでもいいから、彼女が欲しかった。
去り際に零れた彼女の涙が、網膜に貼り付いて剥がれない。
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21:07
笹ヤコ:参
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日付はとっくに越えていた。
祝ってもらう約束をしていなかったので当然といっちゃ当然だが、彼は現れなかった。
返事は18まで待ってくれと言ったのは彼だったけど、別に今日どうこうしようと話していたわけではない。
もしかして他にいい人が見つかったのかもしれない。
こんなお子様を相手にしてくれること自体が奇跡みたいなものだったのだから、いい夢見れたと思って忘れた方が良いのかもしれない。
会えない夜ってやつは必要以上に心を暗くさせる。
はぁとため息をついてカーテンを閉める仕草は、今日何回目か分からない。
しかし、夜中の2時を回ったとき、カーテンの端に小さな光が見えた。
ヘッドライトが地面を照らす。
見覚えのある車種が自宅前へと停車した。
慌てるように車から飛び出した彼は、窓に私の姿を見つけると同時に動きを止めた。
そして煙草を取り出すと火をつける。
散々人を待たせたくせに、何をやってるんだろうこの人は。
そう思った時、彼はこっちを向いて小さく手招きをした。
その仕草を見ただけで、全てを許せる気がしてしまうのだから、恋というのは侮れない。
END.
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