zzzA

□春なので
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最近ナツの様子がおかしい。
ギルドで会っても私の顔を見るだけで逃げ出すし、家にも無断で忍び込むことがなくなった。
一体どうしたのか、聞こうにも本人に逃げられるのではどうしようもなかった。

ただ本人に一番近いコイツなら、何か知っているのかもしれない。
そう思って魚でおびき寄せたのは、空を飛べる青い猫、ハッピーだった。


「さぁ、たんとお食べなさい!」
「…ルーシィが魚を奢ってくれるなんて…もしかして明日は雹が降るのかもしれない!」
「失礼ね!ちょっと聞きたいことがあるだけよ!」


そう言うと何か思い当たる節があるのか、ハッピーは素直に魚を食べ始める。
むしゃむしゃと器用に骨を残して身だけを食べ終わったハッピーは、お腹をさすりながら口を開いた。


「まぁそろそろ聞かれるとは思ってたよ」
「じゃあ教えてくれる!?私がナツに避けられている訳!」
「知らない」
「なによそれーーー!!」


あまりの言い草にハッピーの胸倉を掴んでガクンガクンと揺らすと、流石にまずいと思ったのかミラさんに止められてしまった。
私は魚代を返せと言いたげにハッピーを睨むと、ハッピーは焦ったように言い訳を始めた。
そんなに怯えるほど怖いのかと少し凹んだことは内緒だ。


「た、ただナツは数年前から春になると少しおかしくなることがあります、あい」
「春になると?」
「あい、聞いてみても『わかんねぇ』と返されるんだけど…『なんかモヤモヤする』とも言ってたです」
「モヤモヤ、ねぇ…」


そんなこと言われても何の解決にもならない。
やはり本人を捕まえて聞くしかないのか、そう思った時、ハッピーが曇った顔で気になることを教えてくれた。


「でも…今年はやっぱりなんか可笑しいよ。今までは誰かを避けるなんてなかったし、質問すると分からないなりにも答えてくれたのに…」


そう言って下を向いてしまったハッピーを、私はどう慰めていいか分からなかった。


ナツのことは好きだ。
だから避けられるのはなんか嫌だし、何より結構傷付いてしまう。
それにチームを組んでいるのだからいつまでもこのままでは居られないし、他のメンバーにも迷惑だ。
今はナツと私の関係改善のためにチームは休止状態だった。

いつまでもこんな状態でいるわけにはいかない。
正直、私の財布の中身もキツイ。

そう思って私は立ち上がる。


「じゃあ、協力してよ!今夜は私がナツの家に行く!」
「オッケー!じゃあオイラはシャルルのところに行くよ!」
「アンタそれ…行きたいだけじゃないの」


ハッピーはギクリを肩を揺らして「そそそんな訳ないじゃないか!二人の話の邪魔をしないようにだね!」なんて見え見えの言い訳をしていた。


そうと決まれば今夜、早速その作戦は決行することにする。



ギルドを出る時、怪しい笑顔で視線を送るガジルと目が合った。






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