zzzA
□届くまで
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side:Kazuha
手に心臓の鼓動が残っている。
平次の胸はとても温かくて、心臓はとても強く動いていた。
あれ以来、すっかり元の関係に戻った二人は、周りの人間からは仲直りしたととられていたようだ。
二人きりになると何とも言えない空気になることは、二人しか知らない。
そして、東京行きが決まった。
いつものように新幹線で二人、当然のことなのだが今はちょっと事情が違う。
私の気持ちがばれているのだ。
いつものようにうかうかと寝てなんていられない。
「なんや、結構遠いんやね。東京って」
「誰かさんはいつも寝てはるからなァ」
「ええやん別に!」
「誰も文句なんて言ってへんやろ」
照れを隠すためかどうしてもケンカ腰になってしまう。
本当はちょっといい感じになってドキドキさせたろかなんて思っているのに、そんな高度なテクニックは自分には使いこなせそうもない。
思った以上に長かった東京行きの新幹線は、少しピリピリとしていた。
「ひっさしぶりの東京やね!」
米花町に降り立つと私はそう言った。
長かった大阪からの道程で凝り固まった身体を伸ばす。
「で、今回は何しに来たん?」
「なんや、知らんできたのか、えらい適当なやっちゃのォ」
「ええやん別に」
「アレや、工藤がどうやらとうとうあの姉ちゃんに告ったらしくてなァ。からかいに来てやったんや!」
前々から思っていたけど、平次は結構なアホだ。
そんな理由で新幹線にまで乗って東京までくるこんなアホな男を好きになった自分は、もっとアホなんじゃないかとまで思い始めてしまった。
「うせやん、アンタどこまでアホなん?」
「うるさいなァ、ええやろ別に」
「ええ訳ないやん、そんなん前に会うた時に言うとけば良かったやん」
「和葉知ってたんか!?」
「当たり前やん、蘭ちゃんからしっかり聞いてんで!」
「工藤のヤロウ…」
何で平次がここまで青筋を立てているのか分からない。
蘭ちゃんとは恋バナするような仲でもないし、工藤君は事件を追いかけるのに忙しいのだからわざわざ平次に電話してまで報告することではないのだと思うのだが。
そんな疑問を抱えつつ、私は毛利探偵事務所の呼び鈴を鳴らした。