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□ある酔っぱらいのお話
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※ 未成年が飲酒している表現がありますが、フィクションですので真似しないようにお願いいたします。










火神大我は考えた。
どうしてこんなことになってしまったのかと。


どういった風の吹き回しか。
バスケを通してすっかり仲が良くなってしまった『キセキの世代』と呼ばれる彼らが、お好み焼きパーティと称して家に上がり込んで来たまでは理解できた。
しかし、いざ始まってみると作っているのは自分だけ、連中は遊んでいるばかりだ。
それどころかいつの間にやら酒まで持ち込んでいたようで、パーティは大宴会へと発展してしまっていた。

呑みなれていない高校生は酎ハイの一本で酔えるらしく、すっかり出来上がった彼らに火神は辟易した。
そして、さっきまでは酒も飲まずに『キセキの世代』の世話を焼いていた筈の桃井までもが酔い始めたところから大惨事は始まった。

「テツく〜ん!」
「もっ、もいさん、やめてください」

早々に酔ってダウン気味だった黒子に、酔ってテンションが上がってしまった桃井が抱きつく。
テンションはいつも通りといえばそうなのだが、なんせ酔っているのだ。
いつもなら満足したら離れるのだが、今日は中々離れそうにない。
黒子の本意ではないとはいえ、自分の家でそういちゃつかれては気分も良くない。
火神はそう思って止めようとしたのだが、彼らは完全に面白がってしまっていた。

「さっちん大胆〜」
「桃っちやるッスね!」
「いいぞさつき!もっとやれ!!」

面白可笑しく囃し立てる連中を見て、火神は止める気力が完全に失せてしまった。
それが悪かったのか、事態は最悪な方向へと進んでいった。

囃し立てられて気分を良くしたのか、桃井が黒子の耳へと齧り付いた。
勿論手加減はしてあるが、元々の意味合い的にそれは最大の効果を発揮してしまう。

「ぅあっ!」

奇妙な声が部屋に響いた。
それと同時に全員が黒子の顔を凝視した。
そんな異様な空気にも気付くことなく、桃井は更に黒子に抱きつき耳に唇を寄せる。

「ちょ、桃井さっ、や、やめて、くださっ…!」

慌てる黒子の声がなんだか色っぽいのは気のせいなのだろうか。
酒のせいで赤く火照った顔と、少しうるんだ瞳から目が離せない。
凝視してしまっている火神を差し置いて、部屋の雰囲気は桃井を応援する空気になってしまっていた。

「さつき!もう少しだ!」
「テツヤが落ちるのも時間の問題かも知れないね」
「黒子っちエロいっス!」

そんな声援が功を奏したのかそれとも全く関係ないのかはわからないが、桃井は行為を止めようとはしない。
それどころか遂には黒子を押し倒して、その唇までもを奪ってしまっていた。

「…んっ」

黒子の声が漏れて、その瞬間に湧き上がる『キセキの世代』と呼ばれる彼らたち。
唖然とする火神を差し置いてハイタッチまで決めてしまっていた。
ただ一人、緑間だけは「ふしだらなのだよ」などとぶつぶつ呟いていたが、誰一人として気付く者はいなかった。

そんな中、唇を奪った桃井はそのまま夢の中へと旅立ち、奪われた黒子は桃井の下から這い出しトイレへと消えた。
その顔は酒のせいではないと一目で分かるほど赤く、火神はもしかしてなどと考えを巡らせる。
火神は桃井にブランケットを掛けてからトイレへと向かい、ドアをノックすると中から黒子の声が聞こえた。

「黒子?大丈夫か?」
「……大丈夫じゃないです」
「まぁ、その、酔った勢いだし許してやれば?」
「別に怒ってないです」
「もしかしてショックだったのか?初めてとか?」
「違います。初めてですけど、特にショックとかではないです」
「じゃあなんだよ?」
「…言いたくないです。しばらくしたら戻るので気にしないでください」

そう言われては何も言えず、火神はリビングへと戻った。
するとそこでは一通り興奮し終えたのか、『キセキの世代』にお好み焼きはまだかと催促されてしまった。
火神はさっき焼き終えていたお好み焼きにソースとマヨネーズをかけると、リビングにある空き缶で散らかったテーブルに置いた。

横では桃井がすやすやと寝息を立てている。


火神大我は考えた。
第二の大惨事は桃井が目覚めた時ではないのだろうかと。


end.

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