テキスト4

□ログ22
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○月1日  出席番号2番 

明日うちのクラスに転校生が来る。
ものすごく急な知らせだった。しかも中途半端なこんな時期に?
窓際一番後ろ、つまり俺の席の後ろに新しい机と椅子を用意させられた。疲れた。



○月2日  出席番号2番  

二限目の授業中にそいつは来た。唐突に教室の扉がガラガラ開いたかと思うと、そこに居たのは学校行事にすら滅多に顔を出さない理事長だった。うちの担任が黒板にチョークを置いたまま凍りついていたが、そんなことは意にも介さず教室に入ってきて「注目!」とデカい声を上げた。軍隊かよ。

「今から転校生を紹介するので、皆仲良くするように。」

そう偉そうに言い放った後、ガラリと変わった丁寧な口調で「どうぞこちらへ」と手招きをする。

その転校生とやらが扉から姿を現した時、俺は目を疑った。思わず隣の席の友人の顔を見ると、ポカーンと大口が空いている。良かった、俺だけじゃなかったのか。見渡すと教室全体が転校生に注目していた。高圧的な理事長の手前誰も言わないが、きっと皆の心は一つになっているに違いなかった。

『子どもじゃん』

二年生のクラスに入ってくるなら17歳のはずだ。しかしそうは見えない。どうみても中学生だ。たしかに高校になっても小柄な生徒は存在するが、そういう奴でもやっぱり顔をみれば同年代だと思う。でもこいつは違うだろ?絶対違うだろ?

理事長は担任に「後はよろしく」と言った後、転校生にもなにやら媚びた声をかけていた。でも気がついてしまった。媚びた口調と顔付き、その中にチラチラと侮蔑が隠されているということに。ぞっとした。


…転校生は理事長の方をちらりとも見なかった。



クラスの目線を集めているそいつは、ものすごく機嫌が悪そうだった。
理事長がいなくなった後、担任がそいつの名前を紹介した。

『扇六郎』

その名前を聞いて、当然のことながらクラスの誰もがとある人物を連想した。ほぼ全員が後ろを振り返る。優等生にしてサボりの常習、そして例に違わず今日もその机はからっぽ。気まぐれにあらわれては気まぐれに消える、イケメンにして学校の有名人、その名も扇七郎。

担任曰く、転校生はあの扇七郎の兄貴らしい。病気?で学年が遅れたということだった。
はー、しかしあの扇に兄貴がいたとはねぇ。絶対一人っ子だと思ってたぜ、あのゴーイングマイウェイっぷり。

担任は転校生に席に座るように指示した。その頃には転校生は不機嫌なんてもんじゃなく、あたり構わず噛み付きそうな具合になっていた。幼い容姿にもかかわらず結構怖いな、こいつ。なんだがヤバい感じがする。まあ扇の兄貴だからな…

席に座った転校生をみて、担任は中断されていた授業を再開した。黒板に書かれる数式を意味もわからずノートに写すだけ写しながら、唐突に気づく。


え、こいつ俺達より歳上?あーりーえーねぇー。







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