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□SINCE LAST GOODBYE
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1人部屋で物思いに耽っていると、ふと部屋のドアをノックする音に気付く。
―コンコンッ―
「手塚くん、居るか?」
『はい…』
ドアを開けると、そこには今の俺のコーチの姿があった。
「そろそろ練習の時間だろ?ちょうど私も今行こうとしていたとこでな。良かったら、コートまで一緒に行かないか?」
『分かりました。今、荷物を持ってくるので少し待っていてもらえますか?』
ラケットバックに手を掛けたとき、ふとアイツの顔が浮かんだ。
青学指定の、ラケットバック。
アイツも毎日同じバックを持って、学校へ来ていた。
(…不二…)
ラケットバックを肩に掛けながら、俺に話し掛けてくるアイツの笑顔。
《手塚、おはよ。》
ふと、アイツの声が聞こえたような気がした。
《好きだよ…手塚》
(…っ…)
「手塚くん?どうした?」
『っ…!?』
俺の名を呼ぶコーチの声に、はっと我に返る。
(俺は…いったい…)
『す、すみません。』
「珍しいな。君がボーッとするなんて。」
コーチは、はははっと笑いながら俺の肩を軽く叩いた。
コーチは笑っていたが、俺の表情は冴えない。
何故、あんな幻聴が聞こえてしまったのか。
何故、どうして
こんなにもアイツの言を考えてしまうのか。
(…いったい、どうなってしまったんだ。俺は。)