Book
□SINCE LAST GOODBYE
6ページ/12ページ
受話器越しに聞こえる声は、まるで耳元で囁かれているかのように俺の耳に響く。
『…不二…』
「やっぱり、諦めきれなくて…君のこと」
「君がドイツに行ってしまってから、ずっと諦めようとしたんだ。」
「けど、駄目だった。」
「僕は、君が好きだ。」
淋しげに囁く声。
俺の身体は、そんな不二の声に反応して熱くなっていく。
自分でも驚くほどに、心臓の鼓動は速くなる。
伝わるはずもないのに、身体の熱が不二に伝わってしまうのではないかと不安になる。
「…一度フラれてるのに、未練がましいよね。」
『…不二、そんなに…俺が好きなのか?』
「うん。好きだよ。気が狂いそうになるくらい、毎日君のことで頭がいっぱいなんだ。」
思わずはっとした。
俺も、同じだったからだ。
不二も俺と同じように、俺の事で頭がいっぱいになるくらい毎日、毎日俺のことを考えていた。
(…俺は…)
「手塚?」
『不二…俺は…』