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□SINCE LAST GOODBYE
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俺が頼み込んだおかけで、練習は通常どおりの内容だった。

ハードな練習をしたおかげか、不思議とアイツの事は浮かんでこなかった。


俺はシャワーを浴び終え、部屋着に着替えベッドへと横になった。

身体を落ち着かせると、気持ちもだんだんと落ち着いてきた。



『…ホームシック…か』


そして、冷静にコーチの言葉を思い返す。
まさか、自分がホームシックになるなんて思いもしなかった。
ドイツへ来るのも、初めてではなかったし大丈夫だと思っていた。


(…少し、休息が必要かもしれないな)



今までずっと朝から晩までテニス漬けの毎日だった所為で、疲れがたまっているんだと、そう思った。
だから、メンタルの方まで弱くなってしまっていたんだと。


(明日は、休みを貰うか)



俺はコーチへ明日の練習を休ませてほしいと連絡を入れるため、携帯に手を伸ばした。

普段あまり使わないせいか、何件か不在着信があった。

『またか…これでは、また大石の奴に携帯の意味が無いと言われてしまいそうだな。』


俺は携帯の不在着信を一件ずつ確認していった。
殆どは実家と大石からだったが、一件だけ知らない番号からの着信があった。

『…誰の番号だ?』

俺は何故かその番号が気になり、その番号に掛けなおしてみた。



―プルルル…


「はい…。」

『っ…!?』


聞き慣れた声に、すぐに気付いた。
それは、今までずっと聞きたかった声でもあった。


「…手塚…だよね?」

『…不二か…』

「…うん。久しぶりだね。」

『…あぁ。』




久しぶりに聞く不二の声は、何処か淋しげに憂いを帯びているようだった。

俺は携帯を握り締めながら、不二の声に耳を傾ける。
不思議と不二の声を聞いたら俺の気持ちは落ち着いた様だった。

ふっと、身体の力が抜けるのを感じた。
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