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□SINCE LAST GOODBYE
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「今日は軽い調整だけにしようか。」
『えっ…』
コートへと到着し、アップをし終えた俺にコーチが告げてきた。
俺は思わず何故という疑問をぶつけた。
「いや、さっきの君の様子を見て思ったんだよ。手塚くん、君もしかしてホームシックなんじゃないかってね。」
『俺が…ホームシック?』
「そう。君のような人間がボーッと立ち尽くしたりするなんて、それ以外に考えられないと思うんだ。」
「君は自覚していないみたいだから言うけど、手塚くんは日本に何か未練があるんじゃないのか?」
『っ…!?』
コーチの言葉に何も言い返せなかった。
確かに今の俺は、日本に残してきたアイツの事で頭がいっぱいになっていた。
だが、ソレを理由に練習を怠るようなことはしたくない。
『俺なら大丈夫です。』
「けど、手塚くん。」
『確かにコーチの言うように今の俺はホームシックになっているかも知れません。ですが、それを理由に練習を怠るようなことはしたくありません。』
俺は自分に言い聞かせるように、コーチに言い放った。
テニスをしに俺は此処まで来たのだから。
テニスを疎かに、出来るわけが無い。
それに
テニスに打ち込んででもいなければ、俺はアイツの事をまた考えてしまう。
「…分かったよ。全く、君みたいな人のことをテニスの鬼って言うのかね。」
『ありがとうございます。』