雲の仕事
□cloud,2
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「蒼並か…。俺は谷本!谷本 竜太!」
「ふーん…。」
別に興味はなかった。どんな名前だろうと。どうせ弱いんだろ?
「どこ高だ?この近くか?」
「ここ。」
本当になんなのさ、早く立ち去りたい。咬み殺したい。
「ここ?」
「今度転入することになってる。」
「え!そうなのか?!」
「うん。」
「じゃあ、」
僕には珍しくちゃんと答えてやると、彼は誰にも好かれそうな笑顔で、
「これから、よろしくな!」
こう言った。
その後、彼、谷本は野球部の奴らに呼ばれ行ってしまった。
僕も他に用事がなかった為、そのままアジトの方へ戻った。
「恭さん、今日何かいいことでもありましたか?」
「?別にないけど。」
アジトに戻ると、仕事をひとしきり終えた草壁が僕にこう言ってきた。「なんで。」と聞くと、
「いえ、随分と嬉しそうにしていましたもので…。」
「すみません。」と一つお辞儀して草壁は何処かへ行ってしまった。
「……………。」
別に特別何かあった訳ではない。ただこれからの任務先に行っただけ。
「………………。」
ああ、そうかと導き出した答えに僕は目を閉じる。
「(あの笑顔は嫌いじゃなかったみたいだ。)」
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