雲の仕事
□cloud,2
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「よろしくな!」
彼の笑顔はそこまで嫌じゃなかった。
そこへ来たのは、ほんの気まぐれ。僕はこれから通う高校を見に来ていた。
篠野賀高等学校。確かそんな名前。並中より少し広いと思う。
遠くから野球部の響く声が聞こえる。そういえば並中のほうはしっかりとやっているのだろうか?少しでもサボってたら咬み殺そう。
そんなことをぼんやり考えていると、足下に野球のボールが転がってきた。
「あ、すみませーん!ボールとってくださーい!」
「…………。」
少し新鮮な態度にどう行動すればいいのか分からない僕に、声をかけた彼は僕に近づいて責めるでもなく、
「?どうかしたんすか?具合でも悪いんすか?」
心配してきた。
「……………………別に、平気。」
「そっか!ならよかった!ぼーっとしてたみたいだから。」
と言い、彼は僕に笑いかける。
「なぁお前、ここら辺じゃ見かけねーやつだな。名前は?」
「ひ、…………………。」
そのまま名前を言おうとしてやめる。確か同封されていた手紙に偽名が書いてあった。その名は―……、
「蒼並、蒼並 連夜(アオナミ レンヤ)。」
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