捧物

□膝枕
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‐『仕事』の翌日の昼下りの事‐

「錺職の秀、居るか〜?」
長屋に訪れたのは八丁堀同心・中村主水。しかし障子の向こうに気配はあるものの、呼び掛けても返事が無い。
「?・・・入るぞ」
障子を開けると、昼餉の器を片付けている秀の姿。
「こりゃ八丁堀のダンナ、どうも・・・」
「・・・ったく、返事くらいしろよ」
ぴしゃりと障子を閉めて文句を言いながら、主水は上框に腰掛け、秀をじろりと見た。卓袱台の前で胡座をかいた秀は、首を傾けて耳を軽く叩いてみせる。
「聞きづらいんだよ・・・水が抜けなくってよぉ」
「水?」
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