捧物

□郷愁
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「・・・」
木挽町の自身番でのんびり茶を啜っていた老同心・中村主水は、同じく茶を啜っている定町廻り同心・渡辺小五郎をじっと見つめた。この男、只の後輩同心というだけではなく、自分と同じ『裏の顔』‐時には己より冷酷非情とも思える一面‐を持っている。そんな男が垣間見せた、意外な一面・・・先日、仲間同士で起こった諍いを思い出し、ふっ、と主水の頬が緩む。
「・・・中村さん、どうかしましたか?」
小五郎が顔を上げる。いい加減な様に見えて、鋭い男だ。僅かな気配の違いに違和感を覚えたのだろう。
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