#1859
□Telepathy
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会いてぇ……
数学の授業、先生の話を気だるそうに聞きながら、獄寺はふとそう思った。
その思いの相手は、並盛最強の不良にして並盛中風紀委員長、雲雀 恭弥だ。
半ば強引に恋人という関係にされ、最初はあまり干渉を好まなかった獄寺だが、
それも今ではお互いがお互いを求める関係になりつつあった。
その結果が、この感情である。
獄寺はいつの間にか自分の感情が変化していることに気づいていない。
しかし、雲雀はその変化を見逃さなかった。
自然を装いながらも少しずつ雲雀が獄寺を呼び出す回数は増え、
最初こそそれを渋々了承していた獄寺も回数を重ねるごとにその顔から戸惑いの感情は消えていった。
「獄寺隼人…今から5分以内に応接室に来ること」
この日も例外ではなく、何の前触れもなしに校内放送が鳴った。
会いたい…と思った直後のことだったので獄寺は一瞬驚き戸惑うものの、
どちらかと言うと嬉しさの方が大きかった。
「っつーことなんで、雲雀んとこ行ってくる」
数学の教師にそう告げると、獄寺は足早に教室を出た。
そのどこか嬉しそうな様子に、誰もが授業を抜け出せるからという理由を想像しただろう。
この時、一体誰が獄寺が嬉しそうな理由が雲雀に会えるからだと思っただろうか
。
2-Aの教室を出て階段を降り、昇降口を通り過ぎればすぐ応接室に着く。
おそらく5分もかからずに到着できるであろうその距離を、獄寺は足早に歩いていった。
その姿は、普段眉間に皺を寄せているようすとは比べものにならないくらい幸せそうなものだった。