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□それでも、生きたい
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「―はぁっ…、はぁ…」



目の前に、徳川の本陣。もう少しで手が、届きそうなのに。
………届かない。
体が動いてくれない。



周りに群がる敵兵。
斬っても、斬っても、
数が減る様子が無い。




この戦に勝ち、待っている愛しい妻や子供達の元へ、もうすぐで帰れるのに―…。




後ろには、
燃え上がる大坂城。
今頃、淀殿と秀頼様は自刃しているだろう。



最後の力を振り絞り、槍を地面から抜いた。


果たして…生きて、帰れるだろうか。

そなたとの、約束を守れるだろうか。






『…どうか生きて、御戻り下さいまし、殿…』




あぁ…、まだあの時抱き締めた温もりが残っているのに。






勝てる戦では無い事ぐらい、分かっていた。




愛しき家族を守る為…、そして、生き様を示す為にも―





    私は










「―はぁああああっ!」





―諦めず、戦うのみ―






「真田の戦…っ」







例え勝てる見込みの無い戦であったとしても







「これに見よっ!」







生き様を残す為







「くっ…!」






そして、
そなたとの約束を守る為に…―












それでも生きたい。











(もう一度だけでも)
(そなたを抱き締めたかった)









END
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