パロ小説

□清泉新心
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…。


どうしよう…

マスタングさんに、告白してしまった。


今日一日、気分が乗らないし仕事に集中しよ・・・




昼下がりの午後、市民の色々な書類提出を受付していたらいつの間にか休憩時間に入っていた。

同僚のレベッカに連れられて地下の食堂に来て、いつもどおりにご飯を食べようとお弁当の包みを開けた。

すると、

「今日はどうして遅刻したの?」

「え?」

頬に手をつく友人は何だか嬉しそうにしている…。

現に、私は昨日マスタングさんと色々あって…朝もお弁当をつくり、一緒に出勤したのだが、そんな姿を誰にも見せてはいない。

しかし、この友人は軍人時代からの友達なので…もしかしたら見越されたのかもしれない。


「今日のリザ…、何か変よ」

「そう?」

レベッカは食堂のパンを一口大にちぎると、口に頬張った。

そして、私のほうをじっと見てくる。


「マスタングさんと会ったの?」

Σビクッ!!


「え…、」

いきなりの直球に心臓が飛び跳ねるようだった。

「だって、いっつもすかしたあんたがそんなに表情を変えるなんて元上司の色男意外誰がいるのよ」


い…色男?

確かにマスタングさんは軍人だったころいろんな女性に手を出してたけどなぁ…

「まぁ、ね」

お弁当の包みをあけると、急にレベッカが顔を近づけてきた。

「え!!…まさか、ついにリザにも手を掛けたの!?」


「人聞きの悪い子といわないでよ、」

「だって、お弁当を作った仲でしょ?」

ニヤニヤと彼女が指差すのは今日マスタングさんのついでに作ったお弁当…。

「何で…」

「だって、いつものお弁当にしてはずい分と栄養考えているじゃない、ついでにつくったんでしょ?」

…。

レベッカは…勘が鋭すぎる。

「そうよ、で?」

「ふ〜ん、お泊りしたのね」


!!!!!!!!!


「な、、、、!!」

そんなことない!!

と、大声を出しそうになってしまった。

これじゃあ、肯定をしているのとおんなじ反応ではないか。

「…ええ」

小さく声に出して、レベッカに伝えた。

恥ずかしすぎて穴に入りたい…

「わぁ!!…リザ、やっと過去にとらわれるのやめたのね」


「そんなことない、ただ…」

「ただ?」


私といても、大丈夫であるのか…マスタングさんに掛けてみたかった。

なんて、言えるわけないわよ。


「いいえ、なんでもない、食べましょ!!」


不満じみた顔のレベッカだったが私が話を振り切った途端、余計に首を突っ込まなくなった。

そこが、彼女のいいところなのだ。



短い休憩時間も終わり、また午前中と同じように仕事が始まる。

しかし、

休み時間にレベッカに少し話せただけでちょっとだけ気分が軽くなった。


改めて、マスタングさんのことを考えると

私は過去のことに固執しすぎていたのかも知れない。
マスタングさんは私の軍人時代から大切な人で、私は彼を傷つけたくなかった。

その思いは今も変わらないけど、…

彼が私のことを特別だと思っているのは、ずっと昔から気づいてた。

だから、今新しく歩んでいこうとするマスタングさんに過去という悲惨な思い出を思い出してほしくはない。

だから、過去の特別の私なんかが今の彼についていってはいけない。

そう…思ってた。


まぁ…、結局は今の彼にとって一番嫌なことは過去にこだわる私なんだと気づいた。


「はぁ」

そんな思いが駆け巡って、思いかけずにため息が出た。


「おや、リザどうしたんだ?」


!?

聞き覚えのある声に反応して、思わず窓口から顔を出してしまった。

「ま…マスタングさん!!」


「やぁ」

「やぁじゃないですよ、お仕事は?」

今は午後三時。

いくら早番とは言えど…このご時世に発展途上の企業の社長がのんきに役所へ遊びに来ることは出来るはずがない。

「あぁ、副社長が頑張ってる」

「…、手伝いなさい」

ほとほとこの男は手がかかる。

「え〜リザ…今日一緒に夕食食べよ?」

「…」

「約束したら帰るよ」


半ば脅しじゃない!


「…」


返答に詰まっていると、茶封筒を取り出し、受付のさらに置いてきた。

「これ、私の家の鍵」

「え?」

「うん、前みたいに玄関先で待たせたくないからね、合鍵作っておいたのさ」

チャりんと音を立てて、私の手のひらに銀色に鈍く光る鍵が乗せられた。

「…、」

「いつでも来ていいよ」

そう言われた耳元は、いつもの冷静さを取り戻せないくらい赤くなってしまった。

不覚だ。


でも、嬉しい…


「あの、」

「ん?」


ふと、玄関のほうに目をやると血相を変えた元同僚のハボックがこちらをにらんでいる。

「ハボック…恨んでますよ」

「いけない…忘れてた」


そういい残すと、マスタングさんは手を振りながら玄関のほうへ走っていってしまった。


「今夜な!!」


手が鉄くさくなるのは分かっていたが、今日一日この小さな鉄の固まりが何よりの私の宝物のような気がしてギュッと握り締めた。
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