パロ小説

□清泉新心1
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ここはセントラルに位置する内閣府。

ほぼ中央にある内閣府はこの国の中枢ともいえる建物である。

しかし、この建物が建ったのはつい最近のことであり、改革者は元軍人。

以前から、軍事政権がひかれていた時勢に民主主義への移行はさぞかし大変だっただろう。

しかし、その軍人のおかげで今、私たちはこうして幸せに生きていられるのだ。



――

「マスタングさん、どうも御出勤ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ・・・急なものの押し付けで申し訳ないです」

内閣府が直轄し運営する窓口に一人の黒髪の男がある書類を提出しに来た。

「・・・これは、どのようなお申し付けで?」

「・・・、あはは・・・そんな物騒な代物ではありませんよ」

マスタングは、ひらりとその書類を職員に見せた。

「・・・結婚届???」

「あぁ・・・、結婚届だ」

職員は少し驚いた様子で、マスタングを凝視した。

なぜ・・・政府の最高機関に地方自治に提出する結婚届を送るのか――?

「マスタングさん・・・窓口をお間違えではありませんか?」

「なにを言ってるんだね?」

すると、マスタングは職員の手をそっと握った。

「君に渡しにきたんだよ」

「.....はぁ?」



職員はバッとあからさまに不快感をあらわにしてその手を振り払った。

「・・・リザ、いい加減に私の元に安住してくれないか?」

「・・・私用目的での窓口は使用できません」

職員―・・・、リザはギロりと睨み付けると奥のカウンターへと引っ込んでしまった。

「やれやれ・・・きょうも失敗か」

ため息を一つ残し、マスタングは近くにあるいすに腰をかけることにした。






5年ほど前、マスタングはこの国の改革をした張本人であった。
そのころは、同じ軍人であったリザとともにクーデターを起こし、前軍事態勢を築き上げたブラットレイを打ち破った。そして、この国の民主への歩みを促進させる大きな役割を担ったのだ。

しかし、私たちは、軍人という肩書きを捨てたあの日から大量殺人犯として民主からの裁判を求められたりと、それなりの道は厳しかった。

・・・あれから、幾度となく死刑を執行されそうになったか覚えていない。

だが、つい最近・・・市民の署名運動などで、私の身柄を保証するようにという動きに変わった。

・・・・・まぁ、歴史の過ちである。という概念から助かったのだろう。

それから、私はちいさな会社を築いた。
まだ、業績はないが、それなりに上昇してきている。
そして、リザはあの頭のキレを存分に発揮し、元軍人という身柄ではあるがこの行政機関で働いている。

・・・・ともかくも、いまはお互いに離れ離れであるのだ。


「・・・まだいらしたのですか?」

あれから少し眠ってしまったらしく、リザが窓口を閉めようとしていた。

「・・・かなり寝てたな」

「はい・・・、ここは仮眠室ではありません、早くお帰りください」

せかすように、シャッターを軽く閉める。

「あ!!まて!!・・・一緒に今夜食事しないか?」

「・・・・」

「気が向いたらでいい!!・・・あいてるか?」

「・・・・いいですよ」

「今晩の10時に君の家にむかえにいくから!!!!!!!」

そういい残すと、そそくさとシャッターが閉められてしまった。

















「で、なんですか?」

リザのアパートの前へ車を置き、リザの部屋へ行こうと階段をあがると、そこにリザがいた。

「部屋で待ってればいいのに」

「・・・以前、扉に足を挟んでまでして部屋に侵入したのはどこのだれですか?」

・・・・。

「・・・すみません」

「・・・・今更誤らないで下さい」

リザは、マスタングの横を通り過ぎ、無言で階段を下りていった。

マスタングもそれに続いて階段を駆け下りていった。


車内の助手席に不機嫌のリザを乗せ、近くにあるホテルレストランへ向かった。






「ご注文の品は以上でしょうか?」

ウェートレスに軽く合図をすると、
伝票の用紙を置いて、厨房へと帰っていった。

「…で、今日のお食事の理由は?」

目の前の料理に目を向けずにリザはマスタングに冷たく言い放った。

「…理由とかではなくて、ただ単純に君と食事がしたかっただけだよ」

「・・・そうですか」

脇においてあるナイフとフォークを持つと、リザは食事を口にした。
マスタングはそれを見て安心した。

「ここの料理は美味しいだろう?」

「えぇ…、」





「この子羊のステーキもなかなかだろ?」

「えぇ」







一向に会話が進まない。




かと言っても、リザは美味しそうに食事している。

でも何か…、

  つまらない。




「なぁ、私といると窮屈なのかい?」

「…いいえ、」

「なら、どうして会話をしようとしない?」

「会話をしなければいけないという義務があるのですか?」

キリッとした琥珀色の目つきに少しマスタングは驚いた。

「…はぁ、君もなかなか頑固だね」

「何がですか?」


「君と私との新しい人生の距離感を保とうと一生懸命になるのは分かるが…君はそれでいいのかい?」




先ほどまで敵視していたリザの視線が、ガラリと変わった。

――いかん、本音がつい出てしまった…、


気まずい雰囲気が流れる。

マスタングは己の発言に酷く後悔した。
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