小説1

□バレンタイン
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町中が段々と色づいてきた日々…。

街灯はピンクに彩られて、定番の曲が流れている。

あぁ……、今年はくれるのかなぁ、

チョコ。




「お早うございます、大佐」

「お早う」

朝日が登って、司令部に人が集まってきたころ、マスタングは遅く出勤してきた。

まぁ、いつものことなので…、副官のリザは淡々と業務連絡を伝えた。

「大佐、…午前中はこの書類を処理して頂きます、午後は会議で―…」


何時も通りの連絡で、また眠気が襲ってきた。


「―――…って大佐、聞いてますか?」


欠伸を何度もしているマスタングにリザはピクリと眉が動いた。

「聞いてるよ…、ただ眠い」

「…何時に寝られたのですか?」

「…4時」


……。

リザは盛大なため息をついた。

「朝帰りとは関心しませんね」

「…誰といたか聞かないのか?」

「聞いて何になるのですか?」


半分、怒りが籠りながらリザは答えた。
まぁ、そんなリザを見るとマスタングは嬉しくなるのだ。


「…嫉妬するほどの余裕もないのか?」

「…死にたいですか、」


ガチャ、

後ろに隠しておいた銃を、静かに抜き出し弾を詰めた。
そして、銃口をマスタングに向ける…。

「や…ッ、やだなぁ…、ちゅッ、中尉……ちょっとした冗談だよ…はっはは…」


「そうですか…」


―――怖ッ!


司令部にいた全員がこう思ったに違いない。

しかし、こんな状況が毎日続くのだ。
そのうち皆の恐怖感は薄らいでいくのである。

「では大佐、よろしくお願いします」

と、笑顔で殺人級の書類をデスクの上に積み上げてリザは去っていった。


―――…無理だろ、コレは



渋い顔をして取りかかった。




――…しかし、中尉は今日という日を知っているのだろうか?


2月14日。


女性が意中の(お世話になった)男性にチョコレートを渡す日である。

まぁ…もちろん、上司という立場である私には絶対に渡すはずだ!!


とか思いつつ、自然に鼻の下が伸びてしまうのだった。


「大佐〜、中尉からチョコ貰いました?」

暢気にハボックは、顔が書類に埋まって見えない私にニヤけて笑いかけてきた。

――うざい


「…まだだが…何だ?」


「ふぅ〜ん、」
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