小説1

□雨の中
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風が吹くと砂が舞い、熱い日差しが私達の肌を焼く。

小さな砂の粒子が頬に当たり、私は少し顔をしかめた。

「熱い…、」

誰にも聞こえないようなか細い声が乾いた喉奥から出た。

そういえば…この地獄に来てどのくらいが経ったのかしら?
少なくとも2週間以上は経った気がするけど。

まぁ…そんなことこの戦争が終わるまで関係ないわね。




―――雨の中――――

ザァ――…

スコールのような激しい雨が珍しく砂漠に降り注いた。
何音も雨音で消してしまうように…、

ただ雨が地表を濡らしていく。

その中で小さな靴音がした。

「誰?」

チャっとライフルを音のした方に向ける。

「おやおや…私は敵かい?」

「…マスタング中佐」

ライフルの銃口の先にはずぶ濡れになった軍人が立っていた。

「大丈夫ですか?…雨に打たれましたね」

「あぁ……私は雨の日には使えないからな、君の所に避難してきた」

「…そうですか、」


淡々と受け流して、マスタング中佐を建物の隅へ案内した。
ちょうどそこは死角になっていて、敵からは発見されにくい。
上司を匿うには好都合である。

中佐は、案内した所に腰に巻いているスカートを広げ、発火布を乾かし始めた。

「スコールは直ぐに止むが量が半端ないんだよな」


「そうですね…」

ライフルの銃弾を入れ替える。
さっきの雨が弾の火薬部まで浸透したようで、使い物にならない。

「女性って…少ないよな」

「何がですか?」

「軍人になる女性…事務なら分かるが実践は少ないよな」

「えぇ…、私も引っ張り出された身なので…戦場にいるのは私ぐらいかと」

中佐は何か考えているようだった。
発火布を片手に持ちながら、顎に手を当てている。

「……、少尉はどうして軍人に?」

「まぁ…いろいろと」

「ふぅ―ん」

中佐の頷きの後、スコールの激しい雨音が響いた。

ここが砂漠の大地というよりか、大陸の中にすぽりと浮かぶ湖にするような大地にするくらいに雨が酷い。


早く止まないかな。


「……スコールはすぐに止む、そうせわせわするな」

「……」

気付かないうちに手が動いていたみたいだ。

「…でもこの分だと1時間くらいは降りそうだ」


「そうですね」


すると、中佐は私が座っている表側の方に歩みよってきた。

「…な、何ですか?」
「1時間を有効に使ってやらないとな」


満面な笑みを浮かべて、いきなり中佐はライフル銃を蹴り飛ばした。
「な…ッ!!何するんですか!!!」
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