小説1

□忘れられないもの
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「中尉、」



「なに?」





ロイが早番で執務室にはリザとハボックしかいない。



ブレタを含む三人は、定刻に帰ってしまった。

「静かっスよね、二人だけだと」

「そうね…少尉も帰れば良かったのに」

残ると言っても書類の不備等の確認と提出だけだ。
リザ一人でもすぐに終わらせれる。


「……」

「どうしたの?」

「……いえ、」

ハボックは、扉の近くまで歩くと鍵を掛けた。

「鍵…何で?」

「…中尉って本当にこういう関係には鈍感っスね」

不敵に笑うハボックにリザは初めて恐怖感を覚えた。

「…ちょっと、少尉?」

「…秘密な話しがあるんっス」

「ひ…秘密?」

ハボックの問いかけにいつもの凛とした変事ではなくなってしまった。
何を考えているのか?ハボックの思考が全く予想つかないのだ。

「中尉は大佐をどう思ってマス?」

「…上司よ、それ以上に何か?」

「…嘘つかないで下さい」

ドシっ!!

「ぃたッ…」

壁に押し付けられて、リザは身動きが取れなくなってしまった。
ハボックは、そんなリザを見て細く笑うのだった。

「……あんたは、大佐のことを愛してる」

「なッ…そんなことないわっ」

「…また、嘘を」

小さな唇に大きく骨太い手が覆い被された。

「……フんッ、ン」

「大佐は少なくとも中尉には部下以上のものを持ってますよ」

……、

「……馬鹿じゃないの」

「ハハハ、……そういう感情、邪魔でしょうがないんスよね!!」
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