red snow

□拝啓 先生様方
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先生様 先生様

アナタ方は とてもとても お偉いのですね

只 紙に文字を印刷して 配布する

それだけで 私(ワタクシ)共を支配できるのですから

何かと理由を付けて

理由が見つからなければ

『校則で決まっている』

『プリントに書いている』

そう 仰られるのです

その理由を 伺っておりますのに…

ほんの少しの自由も 認めてはくださらないのですね

私が 唯一誇りを持っていたこと

それさえも アナタ方は取り上げられました

アナタ方からすれば なんて事は無い事でしょう

しかし 私にとっては唯一だったのです

毎日 傷つかないように気遣い

週に2・3度は 輝きを放つように磨く…

指が痛くなろうとも それだけが誇りだったのです

何の取り柄も無い 私にとっては…

確かに私共は 望んで貴校へ参ったのです

支配されるために 時間を惜しんで 勉学に励んだのです

そして大金を払い 通わさせて頂いているのです

しかし余りにも 辛いのです

アナタ方は

『高校が一番楽だ』

『社会へ出たら こんなものでは無い』

そう 仰られます

そうですか

それは それは

ありがとうございます

アナタ方は 先祖代々造り上げてくださった 闇の世界へ行く準備を させてくださっているのですね

人間は皆そうです

悪いウイルスが 飛んでいると聞けば

それを防ぐことに 力を注ぐのです

じっと我慢して なんとか感染しないようにし 過ぎ去るのを待つのです

決してウイルスに 立ち向かおうとは しないのです

それが人間なのです

あぁそしてアナタ方は 私共を規定の人間に しようとするのですね

答えの一つしかない問題を解かせ

標準化させるのです

まるで工場ですね

例えば鉄工場だとすれば

私共は製鉄後に出た 鉄くずでしょうか

例えば木工場だとすれば

私共は紛れ込んできた 曲がった丸太でしょうか

さぞ扱いにくい事でしょう

ありがとうございます

ありがとうございます

心から御礼を申し上げましょう

私共のような不良品を 扱って頂き誠にありがとうございます

これからも どうか私共の 自由を 誇りを 個性を 奪い取ってください

宜しくお願い申し上げます…



fin...
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