過去拍手お礼SS
□氷室先生1日研修inはね学
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☆拍手お礼SS第一弾☆
「氷室先生1日研修inはね学」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここははね学内、職員室の奥の特別室。
はば学から、1日研修という表向きでやってきた氷室零一。いまさら研修でもないが、理事長の天乃橋に言われて、初めはしぶしぶだったのだが・・・
「では、氷室先生、よろしくお願いいたします。今日、あなたを1日御案内する教員は、・・・・」
「はい、その教員は?」
氷室の問いかけに、教頭は渋い顔をした。
「それが・・・まだ来ておらんのです」
「は?教師が、遅刻、ですか?」
氷室の眉間に皺が寄る。
「いや、その・・・まったくお恥ずかしい、」
教頭がさらに言葉を続けようとしたとき。
「す、スミマセンッ!遅れてしまいまして・・・!」
バタン、と特別室のドアが開いて、一人の教師が入ってきた。
「あの、じつはですね、ウチの猫・・・」
「・・・ウオッホン!!
若王子先生、もう授業が始まりますので。
話は後に聞きますから、とりあえず氷室先生を教室へ案内してください」
猫の世話で遅れたとか、とんでもない言い訳を他の学校の教師の前で言わせるわけにいかない。
教頭は、半ば無理やり若王子を教室に向かわせた。
教室に向かう途中で軽く自己紹介をする二人。
「遅れてスミマセンでした、僕は3年のクラスの担任の若王子です。担当は化学です。今日はよろしくお願いいたします」
「いえ、教師が遅刻するなど、よほどの理由があったに違いありませんから。・・・私は氷室です。担当は数学です。」
「ややっ、数学ですか!」
「若王子先生も、数学はお得意なんですか」
「いえ、得意というか・・・まあ」
あはは、と苦笑いをして誤魔化す。
・・・どうも、この男・・・教師らしくない。
氷室は、若王子に不信感を抱き始めていた。
ガラガラッ。
教室のドアを開けて、教卓につく。
その後ろには、氷室も一緒だ。
「あっれーーっ?若ちゃん、その人誰?」
「なかなかカッコイイんじゃない?!」
「若サマーー、おはようございまーーーす!」
クラッ。氷室は、めまいがした。
なんなんだ、このクラスは?
動物園そのものじゃないか?
まるで、生徒がすべて姫条と藤井と鈴鹿ばかりのような・・・!!
教室は相変わらずワイワイと騒々しい。
わなわなと震える氷室に気がつき、若王子が声をかけた。
「氷室先生?どうかしましたか?」
氷室は若王子の問いかけには答えずに、大声を出した。
「静かにしないか!!!
教師が教室に入ってきたら、即私語をやめて自席に着く!!
小学生でも判ることだ!!!
・・・それに教師をあだ名で呼ぶなど・・・言語道断!!ここは学習をする場であって、教師と生徒が馴れ合う場ではない!!」
シーーーン・・・
教室が一瞬で凍りついた。
「あの・・・氷室先生・・
みなさん、いつもはもう少し・・・」
ギロリ。
氷室の目線にギクリとなる若王子。
その後の出席も、いつもと180度違う緊張したものになった。
その後の化学の授業も、氷室は見学したのだが、・・・
(この男が私と同じ教師だと?
馬鹿げているにも程がある!
こんな頭の悪そうな男に勤まるほど、教師は甘くない!)
イライラはつのるばかり。
そして、午前の授業がすべて終わり、昼休みになった。
「氷室先生、お昼ごはんを買いにいきませんか?うちの購買部のパン、美味しいんですよ!」
「結構。
私には持ち合わせがありますので」
キッパリと言い放つ。すっかり若王子のことは幻滅してしまったようだ。
そこに、一冊の本を広げながら氷上がやってきた。
「若王子先生!アメリカの数学誌で、興味深い論文があったのですがイマイチ理解できなくて・・・って、零一兄さんっ!?」
「・・・ここは学校だ、格」
「はっ、スミマセン、氷室先生・・・!」
どうやら氷上と氷室は親戚らしいが、それでさえ学校では馴れ合った態度はタブーらしい。
「一体なんだと言うのだ?・・・この本は、私も興味があって読んだことがあるが・・・」
イマイチ理解できなかった、のだが黙っておくことにした。
が。
「ああ、この本ですか、先生の友人が書いたものですよ。
先生も読みました。そうしたら何箇所か計算と理論にミスを発見したので、今は改訂版がでているはずですよ。」
さらりと言う若王子。
なぬう!!?
氷室が目をむいて愕然とした。
この私にも一部理解できなかった本を読破し、しかも間違いを指摘しただと!?
「そうなんですか・・・では、改訂版を探してみます。ありがとうございました!」
氷上が去っていく。
よろめきながら氷室が口を開いた。
「若王子先生・・・随分と数学がお得意のようですが」
「いえ、ちょっとアメリカにいたことがあっただけで・・・あ、パン売り切れちゃいますよっ!
じゃ、氷室先生またあとで!」
ぴゅうっ、と若王子が逃げるように走り去った。
氷室は、ボーゼンとその場に取り残された。
そこに、通りがかった生徒たちの会話が聞こえてきた。
「若ちゃん、実はIQが200あるらしいよー?」
「ウッソーー、200って言ったら超天才じゃん!」
「若ちゃんに限ってそれは無いかーー」
あははは・・・・
(IQ200、だと!?)
氷室は、ショックでもう何も考えられなかった。
あっというまに午後の授業も終わり、再び職員室内。
「氷室先生、わが校はいかがでしたかな?」
「・・・正直驚きました。・・・・何事も見た目では判らないものだと・・・勉強になりました」
「????」
少し意気消沈気味に話す氷室に、教頭も若王子も戸惑うのだった。
おしまい☆