小説

□片想い
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「ふう」

ようやく仕事が終わりペンを置いた。時計を見ると、すでに10時をまわっている。

(そろそろ帰ろう)

そう思い、席を立ち帰り仕度をする。
無意識のうちに大佐のデスクを見てため息をついた。

(今何をしてるのかしら)

そんなこと私に関係ないのはわかってるけど。
でもやっぱり気になるでしょう?
今日はデートみたいだし。

胸の中がなんだかモヤモヤして、また一つため息をついた。

「どうしたんっスか?ため息なんかついて」

いつの間にか隣にいたハボック小尉が不思議そうに私の顔を覗き込んでいる。

「なんでもないわ。それより、どうかしたの?」

誰にも私の大佐への気持ちを知られてはいけない。
視線を大佐のデスクからハボック少尉に移した。

「いや、あの……。これなんっスけど……」

言いにくそうに頭を掻きながら、ハボック少尉は私に書類の束を差し出した。

「これは?」

まだ仕事が残ってたのかしらと尋ねながら、書類を受け取った。

「実は、大佐に渡すの忘れちゃって」

書類に目を落とすと、どうやら明日の会議の資料のようだ。

「俺、今日当直なんっスよ。すみませんが、大佐の家まで届けてくれませんか?」

申し訳なさそうに言うハボック少尉に

「わかったわ」

と、一言返事をして執務室を後にした。
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