小説

□愛するが故に
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「別れよう」





そう言われたのは、今から一週間前。














最近何か悩んでいる様子だった。







どうしたんですかと尋ねても、なんでもないと返されて。










怪しい。









別れを告げられたのは、そう思っている矢先だった。















(私、何かした?)






あれから毎晩、彼のことを思い出すたびに涙が溢れて止まらない。






でも泣き腫らした目で仕事に行くわけにもいかないから、腫れぼったいまぶたに冷えた濡れタオルを乗せている。







ひんやりとした感触が、火照った顔に心地いい。














目を閉じて、大佐の顔を思い浮べる。









漆黒の髪。







私をからかう、いたずらな笑顔。








幼い顔立ちに隠された、大人びた真剣な瞳。











全部、全部好きだった。







いや、今でも大佐への想いで胸が張り裂けそうなくらい彼のことが愛しい。












(納得できない)





別れた理由は、他に好きな人が出来たから。







でも、あのときの大佐の瞳は、何かを隠していた。







私にも言えない何かを。












(明日、ちゃんと大佐と話そう)





往生際が悪いだけなのかもしれないけど。








それでも真実を知りたい。














たとえ、後悔することになっても。
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