小説

□休日
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休日の朝はいつも憂鬱。







溜まった洗濯物を洗って、掃除をして……。







家事は嫌いじゃないけれど、いつもの忙しい日常に慣れきった私には、ほんの少し物足りなさを感じる。
























………なんて。







本当は、そんなことが理由じゃないのはわかっていた。









休日が憂鬱なのは、そう。








あの人に逢えないから。












ちゃんと仕事はしているかとか、しっかり食事を摂っているかとか、そんなことばかり気にしてしまう。










そんなこと、それほど気にすることでもないのに。







私が一日いなくても、そんなに支障はないだろう。















何かもっともな理由を見つけて司令部に行きたい。








そのくらい彼に逢いたかった。








一瞬たりとも彼の表情を見逃したくない。








傍にいて、少しでも彼の温もりを感じていたい。












(もう中毒ね)







ここまでくると、頭がおかしいんじゃないかと思えてくる。








甘美な媚薬のように彼に酔っている自分。







あまりにも度が過ぎると、軽くヘンタイみたいだと心の中で自分自身を嘲笑った。














「もうこんな時間」






時計に目をやると、すでにお昼近くになっていた。







そろそろ掃除を終わらせて、昼食の準備をしないと。












《コンコン》







掃除道具を片付けていると、玄関の扉を叩く音がした。








(誰かしら……)






こんな時間に人が来るなんて珍しい。





たぶん保険の勧誘か何かだろう。









そう思いながら扉をカリカリと引っ掻くハヤテ号を部屋の奥へ追いやると、ゆっくりとドアノブを回し扉を開けた。






















「やあ中尉」








目に飛び込んできたのは、青い軍服に漆黒の髪とお揃いの漆黒の瞳。









そう、ついさっきまで思い浮べていた例の彼が、なぜか今私の目の前に立っている。















「お仕事はどうされたんですか!」






思いがけない登場に一瞬きょとんとしてしまったが、正気に戻ると外にまで聞こえそうなぐらい大きな声で叫んでしまった。









「そ、そんな怒鳴らなくてもいいだろう?」






上ずりながら私を見る彼は、まるでいたずらがバレた子供のような表情で。







不本意ながらも、そんな彼を可愛いと思ってしまった。











「……それで、どうしたんですか?」






はあ、とため息をつくと、部屋には入れずに玄関の敷居を跨いで彼の顔を覗き込む。









すると彼は真っすぐ私を見て、














「どうも君がいないと駄目みたいだ」









と、はにかみながらに言った。






あどけなさの残る顔立ちなのに、今は妙にその笑顔が大人っぽく見える。











(そんなこと言うなんて卑怯だわ……)







たぶん視察に行くと、司令部を出てきたのだろう。







普段なら確実に怒ってしまうけど、そんな顔されたら怒る気がなくなってしまう。








むしろ、嬉しく思っている自分がいた。












「中尉?」





彼は、黙っている私を不安そうに見つめている。







その不安そうな、だけど温かな瞳に微笑みかけた。








『愛しい』と想いを込めながら。












「…お茶、飲んでいきますか?」





そう言うと、喜んでと彼は言い、玄関の敷居を跨いだ。





そしてガチャリと扉を閉め、奥へと進んでいく。




























たとえ私がいなくても、彼の時間は進んでいく。








私だって、彼がいなくても前に進める。











だけど。









一人の未来は嫌だから。








彼がいなきゃ意味がない。








たとえ時間が進んだとしても、彼がいなければ止まったも同じだろう。




















「どうした?」








彼はくるりと振り返り、早くと私をせかす。









「今行きます」







いつまでもこの人についていこう。








そう思いながら、彼の広い背中を追いかけた。




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私基本、大佐にぞっこんの中尉が好きなのですが、なんかほんと相思相愛(笑)

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