小説

□昔の過ち
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それは突然だった。







東方司令部に一人の男の子が迷い込んだらしく、司令部総出で捜索するはめになったのだ。







「ほんとにいるんスかね?」




ゴミ箱の中を覗きながら、ハボックはいつもの軽い口調で言った。






「さすがにそこにはいないでしょ」






そう言う中尉も、観葉植物の葉っぱの裏など、ハボック以上にありえない場所を捜していた。












「やっぱり警備の見間違い……」






見間違いじゃなかったのか?




そう言いかけたとき、右から小さな影が飛び出してきて、私の腹部に激突した。







「う……っ」




「いってぇ……っ」








思いがけない痛さに腹を抱えた。






そんな私の目の前には、5〜6歳の男の子が転がっている。










「大佐、この子……」





中尉が男の子を起こしながら、私の方を見た。





男の子もつられて私を見ると、目を大きく見開いて嬉しそうな顔をしている。




そして………
























「パパ!」





そう叫ぶと、勢い良く抱きついてきた。









「ちょ、ちょっと待て!」





パパ!?




身に覚えは……ないこともないが(汗)





でもそんなことあるわけ……。







「もしかして大佐の……」




ハボックがわざとらしく驚いた表情で私に聞いてくる。





斜め前から鋭い視線を感じて、慌てて否定した。









「私にこんな大きな子供がいるわけないだろう!?」






中尉に誤解されたものなら、私の身が……命が危ない(汗)






しかしよけいに墓穴を掘ってしまったようだ。





「大佐の年なら、いてもおかしくないですよね」




冷ややかな微笑とともに、我が愛しの中尉は言い放った。







……目が笑っていない。











「んで、どうします?この子」





私達の様子を眺めていたハボックが、半ばあきれ顔で聞いてきた。







「とりあえず、執務室に連れていきましょう」





もしかしたら大佐のお子さんかもしれませんからねと、怖いくらいにっこり笑う中尉。







「だから、違うと……」











どうしたら信じてくれるのだろうか?






何を言っても聞いてくれない中尉に頭を抱えながら、さっきからキラキラとした目で私を見ている男の子を連れ、その場を後にした。
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