小説
□こんなときは
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銀行に強盗が入ったとの通報があり、大佐は私達を引き連れ市内中心部へと向かった。
しかし、今回の事件は呆気ないもので、犯人達は大佐の焔を見ると早々と降参してしまった。
「たいしたことなかったっスね」
運転席に座っているハボック少尉が、ハンドルを回しながら言う。
「大佐のパッチンで一発でしたねって……大佐?」
話しかけても反応のない大佐を、ハボック少尉はミラー越しに見た。
「…ん?なんだね?」
ハボック少尉が自分に話しかけているとやっと気付いたらしい。
ゆっくりと顔をあげると、大佐は力の抜けた声で返事をした。
「どうしたんスか?さっきからぼーっとして」
確かに今日の大佐はおかしい。
今朝私が話しかけたときも、なんだか心ここにあらずという感じだった。
「なんでもない。気にするな」
そう言って大佐はまた下を向いた。
気にするなと言われても、気になるでしょう?
司令部に戻ったら、大佐を問い詰めてみよう。