小説2

□Good night
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「エル、眠いのならベッドに行きなさい」







午後11時過ぎ。







ソファーに座ってうとうとしているエルに声をかけると、見るからに眠そうなのにいやいやをしてその場を動こうとしない。







クッションをぎゅっと抱き締め、瞼が落ちようとするたびに一生懸命目を開き、またこくりとしたかと思うと目を開けてしまう。









眠いのに寝ようとしない。







そんな日が、ここ10日程続いていた。








理由はわからない。







どんなに聞いてもただ寝たくないと言い張るだけで、そんなエルに私もロイも困り果てていた。









「すごく眠いんでしょう?」







そう言ってクッションを奪い取り、まだ寝ないと騒ぎだすエルを抱き抱え私達の寝室へと向かった。








子供部屋で寝かせると、ベッドから起き上がり本を読んでいたことがあったから。











「エル眠くないです……っ」








ベッドに横たえさせ布団をきちんと掛けると、エルはジタバタと暴れて布団から逃げ出そうとする。








そんなエルを捕まえて再び布団の中に戻すと、私もその隣に滑り込んだ。








「ママが隣にいるから、ね?」







眠くて機嫌が悪いのか、鼻をグズグズさせているエルを包み込むように抱き寄せ、とんとんと一定のリズムでお腹を叩く。








それでも必死に起きようとするエルだが、もう限界のようで、しばらくすると小さな寝息をたてはじめ、私は安心からそっとため息を吐いた。










(どうしてそんなに眠るのを嫌がるの……?)







無邪気な顔をして眠る娘のシャンプーの香りが残る前髪をそっと指先で掻き上げながら、心の中で小さく尋ねてみた。










もちろん答えなんて返ってくるはずもないのだけれど。











しばらく可愛らしい寝顔を見たあと、私はやっと寝てくれたエルが起きないようにそっとベッドから抜け出すと、おやすみとその小さな額にキスをしてリビングへと降りていった。
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