小説2

□贈り物
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今日はロイが早番で私が遅番。






いつもは二人で歩く道を、今日は一人で歩いていく。






冬真っ只中の東部(ここ)は街全体が雪に覆われ、気温も氷点下近くまで下がっていた。










私とロイが結婚してそろそろ一年が経つ。







同じ職場で、しかも上司と副官という立場で結婚なんてしたら仕事に差し支えると何度も断ったのだけれど、彼の熱意に負けプロポーズを受けた。







(あの日も、こんな雪の日だったかしら……)






「きゃっ!」







何かお祝いでもしなくちゃいけないのかしらと考え事をしながら歩いていると、前から何かがぶつかってきた。







びっくりして足元を見下ろすと、小さな女の子が転がっている。










「ごめんなさい。大丈夫?」





手を伸ばしたけれど、女の子はその手を握らずに自分で立ち上がった。






その少女はぼそりと大丈夫ですと俯きながら言った。






「お父さんとお母さんは?」





真冬だというのに、女の子はコートも着ておらず、お世辞にも綺麗な格好はしていなかった。







靴もぼろぼろで、指の先には穴が開いている。






(ホームレスかしら?)




そう思いながら、栗色の髪の少女の顔を覗き込んだ。





でも相変わらず俯いたままで、どんな顔なのかはまったく分からない。








「……いません」




私の問いかけに、女の子はどうにか聞こえる声で答えた。






可愛らしい高い声。






澄んだように綺麗な声だが、今は苦しげな響きが混ざっている。








「お名前は?」





寒そうに震えている女の子に、自分が着ていたコートをかけてやった。





私のコートだから、女の子にはもちろん大き過ぎる。





小さな身体がよけいに小さく見えた。









「……エル」





弱々しく答えた少女の身体が、不自然に揺れはじめた。






どうしたの?と呼び掛けると、身体がこっちに傾いてきている。







「エルちゃん!?」






倒れてきた華奢な身体を受け止め名前を呼んだが少女は返事をしない。






頬に触れると、驚くほど冷たかった。







(病院に連れていかなきゃ!)





力なく私によりかかっている女の子を抱き上げて、人込みを掻き分け病院まで走っていった。
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