奇跡〜冬に舞う桜〜
□第8話
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「柚樹との仲はどう?」
「どう?…って……?」
「大晦日の日手繋いでたじゃな〜い」
「っ!?」
見られてたのか……!!
周りに智弥達いなかったから、完全に2人きりだと思ってた…っ。
「あ、あれははぐれたら危ないなと思って…!」
「あら。平助くん紳士ね。将来有望だわ」
遥架と似た笑顔を浮かべた里子さんは、オレの髪をわしゃわしゃと掻き回す。
これ褒められてんのか…?
「それに私達より遅くに帰ってきてたでしょ?寄り道してたの?」
「ぁ、うん。まぁ…桜を見に……」
オレがそう言うと、里子さんは目を丸くした。
次いで、堪えきれないように吹き出して笑いだす。
「あはははっ!そうっ、あの桜を見にねぇっ」
「なんかオレ、おかしいこと言ったっ?」
「ううん。違うの。そう言えば柚樹はあの桜の木の言い伝え知らないんだったなぁ。と思ってね」
「言い伝え…?そんなのあんのっ?」
教えて教えて。と目で懇願するオレの頭をもう一度わしゃわしゃと掻き回し、里子さんは柔らかく微笑んだ。
その笑みの意味がわからず、オレは首を傾げる。
「ま、君と柚樹が私の考えを現実にしてくれたら、教えてあげる」
お腹空いたぁ〜。と伸びをしながら、里子さんはオレの横を擦り抜けてリビングに戻っていく。
里子さんの言葉の意味がわからず、オレはしばらくその場で考え込んでいた。