奇跡〜冬に舞う桜〜
□第6話
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「………」
「………」
「(ぇーと…)…か、片方持ってくれるか?」
「(コクンッ」
愛の背に合わせてしゃがみ、二つの皿の内、軽い方を愛の手に持たせた。
ばあちゃんの手伝いをできたことが嬉しいのか、愛はトタタタッと食事をする部屋まで、足取り軽やかに歩いていく。
小さい愛の小走りと、オレの一歩が同じくらいの歩幅で、オレも愛の横に並んで、部屋へと戻る。
両手で一つの皿を持っている愛の代わりに、部屋の障子を開け、中に入って、机の上に皿を並べた。
「お、愛も手伝ってくれたのか。ありがとな」
「ん」
『おなか空いたぁ〜〜!!』
「へーへー。もう少し待てよー」
俺は適当に空いている場所に座り、まだ姿を見せない柚樹と遥架を待った。
そういえば、じいちゃんやばあちゃん、真人さんの姿も見えない。
それと、この子らの親も。
智弥に尋ねると、親達は帰ってきてすぐに、大晦日の準備に取りかかっているらしい。
「俺と遥架も朝飯終わったら手伝いに行くから、その間柚樹と一緒にチビ達の面倒見ててくれ」
「ん。わかった」
「めんどうなんか見なくてもダイジョーブだよ智弥兄ちゃんっ!」
「ボクらがこのお兄ちゃんのめんどう見ててあげるっ!」
「お、頼もしいなぁ。新しい兄ちゃんの面倒、ちゃんと見ててくれよ?」
『はーい!』
「子供っていつの時代も生意気だよな…」
『そう?可愛いじゃない』と言う総司の声が聞こえた気がしたが、それは気のせいだと信じたい。