奇跡〜冬に舞う桜〜
□第6話
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オレの周りに座っていた子供達が、一斉にペコッと頭を下げ、つられてオレも、頭を下げる。
頭をあげると、柚樹に抱かれている女の子が、いまだにオレに向かって頭を下げていた。
「愛、もう頭上げていいよ?」
柚樹の言葉に、女の子は頭を上げ、オレと目が合うと、すぐさま柚樹にギュゥッと抱きついた。
「…オレの目つきとか怖いかな?」
「あはは…。愛は恥ずかしがり屋なうえに、人見知りだから」
「おにーちゃんっ、はやくおきがえしてごはん食べよーよっ」
「えっ!?もうそんな時間っ?」
はやくはやく。と子供達に急かされるまま、オレは布団から起き上がり、寝間着から普段着に着替えた。
柚樹は、オレの二つ隣の布団で寝ている遥架を起こしている。
顔を洗って歯も磨き、子供達に手を引かれながら、昨日晩飯を食べた部屋へ歩いていく。
その間に、子供達から次々と名前を紹介され、6人分の名前と顔を一致させて、頭にたたき込んだ。
ガラッ
「おはよ、平助」
「おはよっ、智弥。なんか手伝うよ」
「じゃあ、台所にまだ料理があるから、それ運んできてくれ。チビ達は大人しく待ってろよ?」
『はーい!』
オレは智弥に言われた通り、台所に行って、ばあちゃんから料理が盛られた皿を受け取った。
片手に一つずつ皿を持ち、また元来た廊下を戻ろうと台所から出ると、オレと入れ違いに、さっき柚樹に抱かれていた女の子が台所に入っていく。
確か愛…って名前だったっけ…?
愛はばあちゃんの服をクイッと引っ張り、しゃがんだばあちゃんに、何かを呟く。
すると、ばあちゃんは柔らかく微笑み、愛の頭を撫でた。
なのに、愛は眉尻を下げている。
首を傾げると、不意に愛がオレの方を向いた。
正確に言えば、オレの両の手にある皿を。