奇跡〜冬に舞う桜〜

□第4話
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「……いる。…いらない。……いらない。…いる。……いる」

「柚樹、何やってんだ?」

「いる物といらない物の整理」



居間と廊下の掃除が終わって居間に入ると、柚樹が棚の前に座り込んで二つの籠の中に何かを分けていた。

振り返った柚樹の手には、長方形の四角い箱の様な物が握られている。

その箱に描かれている懐かしい面々に、オレは目を丸くした。



「これ…オレ達…?」

「うん。これが平助くんのいた世界を題材にした物語」

「これが…。……薄、桜鬼…?」

「この物語の題名だよ。風間さんが鬼としての名前を土方さんに与えるとき、この名前を与えたの」



柚樹の口から出た意外な名前に、オレはさっきより更に目を丸くして柚樹を見た。

その後、箱に描かれている風間へと目をやる。



「風間が?なんで?」

「土方さんの存在に敬意を表したらしいんだけど…」

「あの風間がなぁ…。…でも、土方さんにピッタリだな」

「だね」



いる物といらない物の分別を済ませ、オレと柚樹は再び掃除に取りかかった。

ゴミを吸い取る掃除機っつー機械を居間の床にかけていき、オレが掃除機をかけたとこから順に、柚樹が柄の先に雑巾をつけた『モップ』っていう掃除用具で床を拭いていく。

掃除の合間に、オレは元いた世界について柚樹に尋ねた。



「平助くんのいた世界はまた違う世界に分かれててね、
千鶴ちゃんが土方さんと結ばれる世界。
沖田さんと結ばれる世界。
斎藤さんと結ばれる世界。
原田さんと結ばれる世界。
風間さんと結ばれる世界。
それから…平助くんと結ばれる世界があるの」

「へっ……?」




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