奇跡〜冬に舞う桜〜
□第4話
3ページ/7ページ
「……いる。…いらない。……いらない。…いる。……いる」
「柚樹、何やってんだ?」
「いる物といらない物の整理」
居間と廊下の掃除が終わって居間に入ると、柚樹が棚の前に座り込んで二つの籠の中に何かを分けていた。
振り返った柚樹の手には、長方形の四角い箱の様な物が握られている。
その箱に描かれている懐かしい面々に、オレは目を丸くした。
「これ…オレ達…?」
「うん。これが平助くんのいた世界を題材にした物語」
「これが…。……薄、桜鬼…?」
「この物語の題名だよ。風間さんが鬼としての名前を土方さんに与えるとき、この名前を与えたの」
柚樹の口から出た意外な名前に、オレはさっきより更に目を丸くして柚樹を見た。
その後、箱に描かれている風間へと目をやる。
「風間が?なんで?」
「土方さんの存在に敬意を表したらしいんだけど…」
「あの風間がなぁ…。…でも、土方さんにピッタリだな」
「だね」
いる物といらない物の分別を済ませ、オレと柚樹は再び掃除に取りかかった。
ゴミを吸い取る掃除機っつー機械を居間の床にかけていき、オレが掃除機をかけたとこから順に、柚樹が柄の先に雑巾をつけた『モップ』っていう掃除用具で床を拭いていく。
掃除の合間に、オレは元いた世界について柚樹に尋ねた。
「平助くんのいた世界はまた違う世界に分かれててね、
千鶴ちゃんが土方さんと結ばれる世界。
沖田さんと結ばれる世界。
斎藤さんと結ばれる世界。
原田さんと結ばれる世界。
風間さんと結ばれる世界。
それから…平助くんと結ばれる世界があるの」
「へっ……?」