奇跡〜冬に舞う桜〜
□第3話
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内心ではすごく気になっていたのか、平助くんは少し頬を染めて返事をした。
智兄と遥姉が用意してくれていた朝ご飯を食べ、洗い物を済ませ、私達は財布と飲み物を持って公園へ向かった。
家から歩いて5分程で着く大きな公園には、小学生くらいの子供達が元気に走り回っていた。
公園の敷地内に設置されている遊具を見て、平助くんは目をキラキラと輝かせる。
さながら、新しいおもちゃを見つけた子供の様に。
まずは公園では一番の人気者、ブランコに挑戦。
「鎖を片方ずつ持って、膝を曲げたり伸ばしたりしながら前後に揺り動かすの」
「こ…こうか?」
少しの揺れを利用し、平助くんはどんどんブランコを前後に動かしていく。
本当に平助くんは飲み込みが早い。
「おぉ〜〜!すっげぇ高ぇっ!」
「落ちないように気をつけてねー!」
聞こえているのかいないのか。
平助くんの乗っているブランコはどんどん高さを増していく。
もう今にも1回転しそうなくらいに。
いつの間にか、公園にいる子供達のほとんどがブランコの前に集まり、まるでヒーローの様に平助くんを見上げている。
「なぁっ!柚樹ー!」
「何ーっ?」
「これどーやって止まんのーっ?」
「揺れが小さくなるのを待つしかないよーっ」
「んー…。…めんどくせぇっ!飛び降りるっ!」
止める間もなく、平助くんはブランコの遠心力を利用して空中に飛び立った。
平助くんの体は綺麗な放物線を描き、それを追いかけるように長い髪が空中に棚引く。
平助くんはトンッと言う軽やかな音を立て、公園の入り口辺りに着地した。
乗り主のいなくなったブランコは不定期的にガクンッと揺れながら、徐々に揺れを小さくしていく。