奇跡〜冬に舞う桜〜
□第2話
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「……あ、そーいえばさ、さっき見たんだけど…」
「?何を」
「平助がさー、柚をギュゥッてしてた」
「…ギュゥ?」
「よーするに、抱きしめてたのねー。平助寝相悪いみたい」
「お前もな」
ガキの頃、何度寝相の悪い遥架に布団を追い出されたことか…。
そんな苦い思い出を思い返し、目頭が熱くなった様な気がしたが、それは気のせいだと信じたい。
「今日の晩どーする?外食ー?」
「んー…。平助の分の日用品買いに行ったついでに外で食べてくか」
「柚喜ぶだろーなぁー。平助も現代の街並み初めて見るだろーし」
「そーだな。ゆっくりでいいから、今の時代に慣れてくれればいいんだが…」
見たとこ柚樹と同じくらいの年頃だろうし、知らない世界で1人、心細かったりするんだろうな…。
「ま、傍にあたしらがいるから大丈夫っしょ」
「どっからそんな自信が出てくんだか」
「あたし自身!」
「そーかい」
少し呆れつつも、遥架のこのポジティブな笑顔で心の中にあった陰りが薄れていく。
小さい頃からこの笑顔にはいつも支えられている。
俺も、柚樹も。
「……よっしゃぁ!スープ完成っ!」
「じゃぁ次温野菜な。それが終わったら洗濯物」
「こき使いすぎじゃないかな、智弥くん?」
「気のせいだろ」