奇跡〜冬に舞う桜〜

□第1話
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式も終わり、担任から冬休みの宿題をHRで受け取り、生徒達は帰路につく。

外はまだ雪が降っており、薄く積もった雪が道路を白く染めあげていた。

ふと、後ろを振り返ると、私が歩いてきた道に浅い足跡が点々と続いている。



「明日にはたくさん積もるといいなぁ…」



両側に連なる住宅の塀の上や玄関の前には、早くも手のひらサイズの小さな雪だるまらしきものが作って置かれている。

明日にはその小さな雪だるまの隣に、たくさんの雪の仲間が増えるんだろう。

後ろから聞こえてきたエンジン音に、私は右側に避けつつ、そんな雪の造形を眺めながら歩いた。



「私も明日作ろうかな…」

「何を?」

「えっ?…あ、智兄っ」



急に自分にかけられた声に横を向くと、バイクに乗った私の兄、柊智弥(ひいらぎ ともや)が私の顔を覗き込んでいた。

大学が午前中で終わり、バイトもないようで、そのまま帰ってきていた途中のようだ。

智兄はポンポンッと後ろをたたき、私にバイクの後ろに乗るよう促す。

私は持っていた鞄を落ちないようにしっかりと持ち、後ろに跨って、智兄の腰に手を回した。

智兄はそれを確認すると、バイクを発進させる。



「明日、何か作るのか?」

「うんっ。雪が積もったら雪だるまでも作ろっかなぁ。って思って」

「この分だと明日には積もるだろ。しっかし、やっぱ寒いもんは寒いなぁ。雪は好きだが、この寒さは勘弁だ」

「冬の風情だよ、智兄」

「風情、ねぇ…。柚樹、雪見しながら酒でも飲むか」

「私未成年だよ?」



堅いこと言うなって。と、智兄は笑いながら私を振り返った。


よそ見運転は危ないよ、智兄。


私達が住む家が見えてくる距離まで来た時、家の前に見慣れた背中を見つけた。

両手に中身がたっぷりと詰まった白いビニール袋を持ち、重たげな袋をその細腕で難なく支えているのは、私の姉で、智兄と双子の柊遥架(ひいらぎ はるか)だ。




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