奇跡〜冬に舞う桜〜
□第14話
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───……クラスの係の仕事ということで、私は職員室に、クラス全員の数学のプリントを運んでいた。
これを数学の先生である、安藤先生に渡さなければならない。
「失礼しまーす。安藤先生いらっしゃいますか?」
職員室の入り口から中を見渡すと、安藤先生が、わかりやすいように手を振ってくれた。
私は安藤先生がいるところまで歩いて行き、机の上に、持っていたプリントを置いた。
「ご苦労様です、柚樹さん」
「係の仕事も残り少しですから」
「残り約1ヶ月ですね…。そういえば、明日が合格発表だと聞きましたが…」
「あ…はい、」
実は先週の中頃、私が志望している学校の入試があった。
その合格発表が、いよいよ明日に迫ってきている。
入試当日、今までにないくらい緊張していた私に、智兄、遥姉、そして、平助くんは、いつもどおりに接してくれて、『だいじょーぶっ』と、背中を押してくれた。
そのおかげで、いくらか緊張もほぐれ、自然体で試験や面接に臨むことができた。
だけど、やっぱり不安なもので…。
「きっと大丈夫ですよ、柚樹さんなら」
「っありがとうございます」
「いえいえ。では、係のお仕事ご苦労様でした」
私は安藤先生に向けて小さく頭を下げ、職員室の出口に向かおうと、体の向きを変えた。
すると、後ろから、あ。という安藤先生の声が聞こえて、思わず後ろを振り返った。
「どうかしたんですか?」
「君に吉報があったんです。危うく忘れるところでした」
「吉報?」