奇跡〜冬に舞う桜〜
□第1話
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―――……聖夜・クリスマスイブ。
小さな子供はサンタクロースと言うおじいさんの存在を信じて胸を膨らませ、その存在の認識を卒業した子供達はサンタではなく、親から送られるクリスマスプレゼントに胸を膨らませる日。
私、柊柚樹(ひいらぎ ゆうき)もそれは例外ではなかった。
私の場合、親からではなく一緒に住んでいる兄妹からだけど。
「……わ…。雪だ…」
『ホワイトクリスマス』と言う言葉があるけど、今日はまさにそれだ。
サンタの存在認識を小学校5年生の時に卒業した私は、既にその存在を信じてはいないけれど、この日ばかりはサンタが奇跡をもたらしてくれたのではないかと思ってしまう。
「柚樹おっはよー!」
「おはよー、茅咲」
体についた雪を昇降口ではたいていると、同じクラスで小学校からの友達、紺野茅咲(こんの ちさ)が通りかかり、挨拶を交わす。
式、ダルいね〜。と、雪を払いながら言う茅咲に、私もそうだね〜。と返事を返す。
聖夜が訪れる時間まで、私達学生は学校で『終業式』という式に出なければならない。
1時間ちょっとで終わるその式に出るために、学校へ行かなければならないなんて、考えるだけで億劫だと思う。
普段ならそう思うけど、今日は『終業式』
しかも、明日から2週間の休み。
そう考えれば、そんな面倒くささも自然となくなる。
「今日からしばらく学校休みだね」
「イェイ♪学校休みぃ!」
「でも宿題多いよね」
……あ、黙り込んだ。
茅咲は運動はできるけど勉強が苦手だからね…。
逆に、私は勉強は苦手ではないけど、運動が苦手。
「ま、休みがまだ始まったわけじゃないし。休みの間は遊ぼーね!」
「うんっ、そだね」