奇跡〜冬に舞う桜〜
□第13話
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「───……みんな、たっだいまぁ〜」
2月も半ばのある日。
今年の初め頃から仕事に出ていた里子さんが、今日家に帰ってきた。
里子さんは手にたくさんの荷物を持っていて、それらを玄関の床に置き、出迎えたオレと柚樹に抱きつく。
オレと柚樹も里子さんの背中に手を回し、抱きしめ返した。
久しぶりに感じる母親の温もりに、オレも柚樹も、どこか心地いい気分を味わう。
「2人とも風邪とか引いてない?」
「大丈夫だよ〜」
「オレも今んとこ大丈夫〜」
「母さんこそ、体調大丈夫なのか?」
「ぶっちゃけスッゴく眠たい」
「少し寝てきなよ。着替えとか洗濯しとくから」
遥架は玄関の地面に置かれたキャリーバッグを持ち上げ、そのまま風呂場へと持っていった。
オレと智弥は里子さんが持って帰ってきた荷物を持ち、それを居間に持っていく。
「じゃぁ、私はちょっと寝てくるわ」
「うん。ゆっくり休んでね」
「えぇ、おやすみ」
里子さんは2階へと続く階段を上がっていき、しばらくして、部屋の扉が閉まる音が聞こえた。
柚樹はその音を聞き届けてから、居間に入ってきた。
「こっちは書類とか入ってるやつだな…。…ほら、土産」