奇跡〜冬に舞う桜〜
□第10話
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───……チリンチリーンッ
「お、柚樹に茅咲、おかえり」
「ただいまっ、智兄」
「ただいまですっ!」
喫茶店の扉を開けると、手にトレイを持った智兄が、私達を出迎えた。
店内を見渡してみたけど、平助くんの姿が見えない。
「(どこだろ…)」
「昼飯作るよ。何がいい?」
「ぁ、じゃぁオムレツ」
「あたし日替わりパスタお願いしまーすっ」
「はいよ。適当に空いてる席座ってな?」
はーい。と返事を返し、私達は空いてる席を探してそこに座った。
窓際のその席は太陽の光が射し込んで暖かい。
「やっぱ智弥さんかっこいーなぁ。彼氏さんにほしいゎ」
「残念。もう彼女さんいるよ」
「そりゃぁ放っとかないよね、女の人が」
彼氏ほしぃ〜っ。と、茅咲は机の上にうなだれる。
そういえば、前に付き合ってた子と別れたんだっけ…。
「前から思ってたんだけど、なんで茅咲って松と付き合わないの?」
松(しょう)というのは茅咲の幼なじみで、小、中とずっと同じクラスの男の子。
茅咲と同じ剣道部で、学年でも有名なくらい2人の仲はいい。
付き合っててもおかしくないのになぁ。と、常に私は不思議に思ってる。