奇跡〜冬に舞う桜〜
□第1話
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「───……いやー。食った食ったぁ」
「ごちそうさまでしたっ」
「はい、おそまつさま」
太陽は既に身を隠し、辺りが夜の闇と雪明かりで染められた頃、私達の家でも机の上にあった料理は胃の中へと消えていた。
3人であの量を食べきれたと言うのが、私には今でも不思議に思える。
食べた後の満腹感から、私達3人は片付けを後回しにしてソファーに座った。
テレビでは、今話題の芸人達が、クリスマスのドッキリ企画に引っ掛かっている最中だ。
私達はそのテレビを見ながら、食後の後の時間をのんびりと過ごしている。
「……あっ、柚、言い忘れてたっ」
「?どうしたの」
突如、遥姉が思い出したように手を叩いて私の方へ視線を向けた。
遥姉は言いにくそうに視線を泳がせた後、表情を引き締めて私の瞳を見据える。
「クリスマスプレゼントで頼んでたゲームのことなんだけど、」
「ぁ…やっぱり無理だった?」
意味を理解した私は、遥姉の代わりに自らその言葉の続きを唇に乗せた。
遥姉はうん。と小さく頷いてから、申し訳なさそうに私の頭を撫でる。
「ゴメン。柚の望むことは叶えてあげたかったんだけど、」
「そんな大袈裟な…。ゲームくらいで私は落ち込んだりしないよっ?」
「でもなぁ…。今日でクリスマスプレゼントあげるの最後なのに、柚が欲しいものをやれないなんてさ、」
「だーいーじょーぶっ!」
私の家は、クリスマスプレゼントは中学校まで。というように決めているらしい。
つまり、今中学3年生の私は、今日でクリスマスプレゼントを貰えるのが最後。
けれど、私が欲していたものは売り切れてしまっていて、手に入らなかったようだ。