小 説
□儚き夢の如し
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夜半、いつも決まって目が覚める。
すぐ側で小さく聞こえる寝息が、ようやく胸をなで下ろすことを許す。
いつか、この愛する女が自分の側からいなくなってしまいそうで、
怖い。
まるで夢の如く美しく儚い女。
夢なら覚めてくれるな。
どこにも行くな。
離れるな。
俺の側にいてくれ。
静かに横たわる華奢な肢体をぎゅっと抱きしめる。
強く抱きしめれば抱きしめるほど、硝子細工のように繊細な躯は忽ち壊れてしまいそうで。
手を離せば消えてしまいそうで。
「ふぅ…うん、く…し」
「す、すまん。起こしてしまったか」
慌てて回した腕を緩める。
「ほうせん様…?」
先まで夢を見ていたであろう瞳が、呂布を見つめる。
困ったような怯えているような顔を見て、貂蝉は優しく微笑むと、呂布の頭をゆっくり撫でた。
「怖い夢でも見たんですか?」
「…貂蝉、どこにも行くな」