小 説
□可愛いひと。
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奉先様
なんと猛々しい武勇。何者も寄せ付けない無双の漢…。
でも私にとっては愛すべき可愛い人。
私を誰より愛してくれる人。
私の言葉に一喜一憂する姿が可愛くて、時々苛めたくなってしまう。
戦場では鬼神と呼ばれる方ですが、
私の目には
子犬のように愛らしく映っています。
「貂蝉の欲しい物、俺が全て手に入れよう。今何が欲しい?」
私を喜ばせようといつも一生懸命。
「私の欲しい物…ですか?」
少しだけ意地悪をしたくなってしまいました。
「山奥の仙女が持つという不老の薬が欲しいのですが、この広い大地、どこにいるか…」
「貂蝉、心配はいらん。俺が必ずその仙女とやらを見つけだしてくる」
奉先様はきびすを返して赤兎に跨ろうとしたので、慌てて手を掴んで引き止めました。
「奉先様!…私はそのようなものよりも、奉先様がお側にいてくれるだけでいいんです。行かないで…」
「…貂蝉。
俺はお前がどんなに歳を重ねようと一生側にいる」
その大きな体で優しく包み込んでくれる奉先様。
さっきは意地悪してごめんなさい。