初恋

□ずっとずっと傍に
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深夜0時、ガチャリとドアが開く音と同時に「ただいまぁ〜」という声が聞こえる。
木佐さんが仕事から帰ってきた。


出迎えようと玄関まで行くと
その場で木佐さんがへばっていた。

「木佐さんおかえりなさい。あの、大丈夫ですか?ご飯はどうします?もうお休みしますか?」
「だ、大丈夫だから…ゆきな、しよ」
「わかりました」

ひょいと木佐さんを抱きかかえるとそのままベッドへ向かった。


最近の木佐さんはいつもこうだ。
俺が木佐さんのところに泊っている間なんていうのは特に。

木佐さんが俺を求めてくれるのはすごく嬉しいんだけど、逆に疲れてるのに無理してるんじゃないのかなと思う時もある。


(俺、木佐さんの迷惑になってるんじゃないかな)






行為に入る前、俺の心に引っ掛かってた気持ちが無意識のうちに言葉となって出てきた。

「あの…俺、もう来ない方がいいですかね?」

思わず出た言葉にはっとして、口を手で押さえる。もう遅いけど。
俺のこの発言にびっくりしたのか、木佐さんは俺の方を目を丸くしたが、
すぐに眉間に皺を寄せて怪訝な顔をした。


「は?どういうこと?俺何かした?」
「や、なんていうか色々迷惑かけてるっぽいですし」
「何が」
「木佐さん疲れてるのに無理やりセックスさせてるみたいで…迷惑かけてるんじゃないかなぁと思って」


木佐さんは俺から視線を外し顔に手をつけ、はぁと大きくため息をついた。
呆れられてしまったのかな…と少しどこか悲しい気持ちになり下を俯いていると
突然、両頬を木佐さんの手で挟まれて目線が合うように顔を向けられた。

「あのな!俺が好きでしてんの!俺が雪名とセックスしたいからやってんの!いつどこで俺が迷惑だとか言ったんだよ!」
「それは…」
「言ってないだろ」
「はい」


俺の頬から木佐さんの手が離れ、顔を横に向けた。
木佐さんの耳が少しだけ赤い様な気がする。

「雪名、あんときの自信どこに行ったんだよ。人のこと自信なさすぎとか言った癖に」
「そうでしたね、すいません」

小さい背中がすごく愛おしくて、ぎゅっと抱きしめる。
それに返すように、木佐さんが俺の腕をきゅっと握りしめる。


「俺は雪名と一緒にいるのがいいんだよ。一緒にいると疲れを忘れられるんだよ。気づけよ」
「気づけなくてすいません。俺、まだまだ未熟ですね」

驚いた。
木佐さんがそんな風に想ってくれていて。
その気持ちが俺にものすごい自信をくれる。
すごく嬉しくて、自惚れてしまいそうだ。

「木佐さん」
「…なんだよ」
「前よりももっといっぱい愛しますね」


そういって口づけを交わす。
いつもより甘く深く、何度も。





こんな未熟な俺でごめんなさい。
自信あるとか言っておいてなくてごめんなさい。


だけどやっぱり俺は木佐さんが大好きだから、
いっぱい愛しますから、



傍に居させてください。





20110501

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