short.
□過去形愛シテル。
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ずっと、好きでした。
ずっと、愛していました。
ずっと、一緒にいたいと
本当に心の底から、思っていました。
ねぇ、ずぅっと言えなかったけど、大好きだったんだよ―――――。
―――――――――――――――――――――――――――過去形愛シテル。
ぴりりりりりりり・・・
「ん、」
「あむちゃん!朝だよー!!」
「起きて、起きて!!」
「お散歩日和ですぅー」
「・・・夢じゃ、ない」
イクトは、突然、あたし達の目の前から
消えていった。
でも、幸せそうに眠っているイクトを見たら、
涙も出なかったんだ。
だって、嘘だと思っていたから。
「・・・じゃあ、お墓参りのついでに散歩しに行こっか」
「やったぁー!」
「はーい!!」
「お散歩ですぅ!」
+
「イクトー、来たよ。」
強い日差しの中、買ってきた花を墓石の横の花瓶に供えて、
返事をするはずもないイクトの墓石の前で話し始める。
「ホントは、イクトが生きてるうちに言いたかったんだけど。」
バカみたいに苦笑しながら、目に涙を少しだけ溜めた。
「あたし、幸せだったよ。」
イクトを、好きになれて。
イクトが好きになってくれて。
「・・・でも、もう少しだけ待っててくれたらよかったのに、なッ・・・」
堪えた涙は、もう限界で。
ぼろぼろと頬をつたって落ちていく雫。
地面いっぱいに敷かれた小石と見えている砂に、涙は滲んだ。
「ずっと、ッ好きだった。ずっと、愛してた。ずっと、一緒・・・いたかったよ。」
あたしはこの時、
自分の意地っ張りを、初めてかと思うくらい
今までで一番嫌った。
ずっと、言えなくてごめんね。
イクトを失くしてから、気がついた。
本当の愛に。
バカだな、あたし。
死んで本当の愛を
見つけるなんて。
だから、今言えるのは
過去形愛シテル。
だけど
逢いに逝くから、待っていて―――――――――。