SSS


思いつくまま気の向くまま、ひたすら妄想を殴り書き^^
◆そして動きだした 

「なあ、骸。お前最近活動費の消費が激しいけど何やってんの?」


会計から提出された資料に目を落としながら思わずため息をつく。

守護者達にはそれぞれ年間決まった額を「活動費」として渡し好きに使用出来るようにしているが、骸の使用金額だけがこの1か月桁外れで多いからだ。



「おや?守護者に与えられている活動費の内容は特に報告義務などないはずですが」



けれど呼び出された俺のワガママ姫と来たら、涼しい顔で正論を返すだけ。

そりゃ俺だって知ってるよ?だから今まで誰にもこんな質問したことないし。

けど、仕方ないだろ?俺の超直感がヤバいって告げてんだから!



「だいたい聞くなら僕よりも雲雀恭弥でしょう?世界中飛び回ってわけのわからないものばかり収集してるじゃないですか」

「ま、まあ雲雀さんのは、なんつーの、所謂ミステリーハンターみたいなもんで害はないし。けど」

「けど、なんですか?」

「なんか今回のお前のは、嫌な予感がすんの。最近ヴェルデと接触してるみたいだしさあ。」



そう告げれば、目の前のワガママ姫が急に目を細めて、嬉しそうに微笑んだ。

あ、これはヤバい。これは確実にアウトだ。

だって完全に「何か」企んでる時の顔してるし。




「ねえ、ボンゴレ。君、この間僕がとても楽しみにしていた映画、当日になってキャンセルしましたよね」

「……は?いや、なんで急にそんな話?」

「あれ、どうして突然キャンセルしたんですか?」


突然話を変えられて思わず首を傾げたところに投げつけられた質問。



「それは…、その急な会議が入ってさ。その時も言っただろ?っていうかなんでそれを今…?」

「そうそう急な会議でしたね。そう言えばご存じでした?僕が観たかったその映画、その後突然イタリアでの公開が終わっちゃったんですよ」

「へ、へえ。そうなんだ…。それは、運が悪かったね」



ははは、と誤魔化した俺の笑いは情けない程棒読みで乾いていたが、骸はそれを怖いくらい綺麗な笑みで見つめ続けた後、少しの沈黙を置いて、口を開いた。



「ああ、すいません、ボンゴレ。僕の活動費の使用目的について、答えてませんでしたね」



そして、ゆっくりと顔を近づけ、その両の目いっぱいに俺を映して。



「僕たちはすでに動き出しています」



「………え?」



そっと、囁かれた、物騒なコトバに。


骸の突然増えた活動費と、短冊に書かれた言葉が一瞬にして繋がって、一気に嫌な汗が流れる。


「ちょっ、どーゆー意味だよそれっ!!ていうか、ぼ、僕たちって?」

「クフフ、後はご想像にお任せします。では僕も急な会議がありますので、これで。」



そのままニッコリと微笑みながら霧に紛れて消えていく骸に。



「ちょっ、むくろっ!、ダメだよ!?変なことすんなよっ!!!?」



俺の切なる願いは届くことなく、虚しく俺とこの部屋に留まった。



(アイツ、ヴェルデと組んで宇宙に手ぇ出すつもりなのー!!?)




end




end


「夢は大きく?」の続きです。
骸様は動きだしています!^^

2016/07/10(Sun) 22:06 

◆夢は大きく? 

「短冊、ですか?」

「うん、たまには良いかなあって。書いたらそこに結んでおいて?」

「…なんでまた急に」

「いーじゃん、たまには」


呆れる恋人の冷たい視線に負けじと笑顔で言い返して、拒否を認めないと暗に訴えれば。


しっかりとその意味を感じとった骸は、さっさと抵抗することを諦めため息をつきながら手の中の短冊を忌々しげに見つめた。



………それから数時間後。



「さて、何書いてあるかなあ」


真夜中、俺は暗闇の中、ちょっとドキドキしながら、俺の可愛いワガママ姫の願いがしたためられた短冊へと、手を伸ばした。





夢は大きく?








骸の夢は『マフィア殲滅』だ。

あの衝撃的な出会いの時初めて聞いて以来、10年経ってもその夢は変わらない。

マフィアのボスの恋人になっても、やっぱりその夢は譲らなかった。

けどちょっと前までは口癖のように言っていたのに、ここ数ヶ月、そのコトバを聞いてない気がする。

その上勝手にマフィアを壊滅することもなくなった。



(もしかして、とうとう諦めた?)


そう気づいたのはほんの数日前。


本当は直接本人に確認すればいいんだけど。

っていうかそれが出来たら簡単なんだけど、あの照れ屋で天邪鬼なワガママ姫にそんなことしようものなら。

例え本当に諦めていたとしても、認めないどころか誤魔化すためにまたどこかのマフィアを壊滅しちゃいそうだ。

っていうか絶対、する。

別にどっかのマフィアが潰されようとぶっちゃけ興味はないけど、やっぱそこはホラ、平和主義な俺的には避けなきゃいけないかなあなんて思っちゃったワケで。

仕方なく考えたのが、七夕を利用した短冊なワケだ。


「コレで、俺の奥さんになりたいとか書いてあったら最高なんだけど」


なんて絶対にあり得ない予想に期待を抱きつつ。

自らの炎を灯り代わりに骸の短冊に書かれていた願いをドキドキしながら目で追った俺は。



「……………は?」


そこに書かれていた、俺の予想の斜め上を、いや、軽く遥か上をいっていた内容に、そのままゆうに数分は固まっていた(ハズだ)



(そう言えば最近アイツ、やたら観てる映画のDVDがあるな)


明日は、その最新作を観に行く約束だってしちゃってる。


けどまさかこうくるとはホント、アイツの思考回路複雑過ぎて(イヤ逆に単純過ぎて?)もう理解することはきっと一生不可能だと悟る。


けど。

問題はそこじゃない。

短冊に宣言するように書いたからには、真剣なんだろう、という事が最重要課題で。



「これ、どうやって叶えるつもりなのアイツ…」



否、どうやってこの願いを俺は阻止すればいい?


なんて、真夜中に、ない頭で考えたところで妙案など閃くはずもなく。


とりあえず、

可愛い俺のワガママ姫の、新たな野望を阻止するために、明日行く約束をしてた映画を延期しようと固く決意した。




end



唯恋の2人で七夕ネタ(笑)
骸様が観ていた映画のDVDは『イン☆ペン☆ンス☆ィ』(笑)

つまり願いは…?

2016/07/09(Sat) 21:00 

◆賞味期限 

「骸?何してんの?」


お菓子を取りに行ったはずなのになかなか戻ってこない骸が気になってキッチンへと足を運べば骸は冷蔵庫の前で立ち尽くしていた。


声をかけた俺に振り返った骸が手にしていたもの。

それは今しか食べれないミント味のチョコ菓子。

しかも正確には今はもう売っていないミント味のお菓子。


「あ、それ大事にとってたのにとうとう食べるの?」


そう、それはもう一年も前に骸がホクホク顔で買い込んでたもの。

季節限定ものはすぐになくなっちゃうからと秋になっても冬になっても食べれるようにと大量に買い込んでいたやつだ。

なのに骸ときたら、まだまだ先が長いからなんてなかなか食べずに結局1年経ってまたミント味がお店に並ぶ季節になった。

だからやっと食べる気になったんだろうけど。


「……え、むくろ…さん?」


嬉しいはずなのに、何故か失意のどん底みたいなカオして俺を見る骸が、


「僕としたことがっ、こんな失態を犯すなんてっ!!」


そう言って目の前に見せつけるように差し出した箱を見ればそこに記されていた数字の羅列を思わず二度見して。



「っげ、これ賞味期限切れてんじゃん」

「っうう、1年大事にとってあったのに酷すぎますぅ」



思わず声に出してそう言った途端骸が膝をつき泣き崩れたりするもんだから。


「む、骸、大丈夫だよ、食べれないわけじゃないんだし。それにほらっ、何なら今からミント味のチョコ、ボンゴレの力でいっぱい作ってやるから、な?」


なぐさめるために適当な事を言った俺は、その後大量のミント味チョコを買い占めさせられたのだった。。。



(だってボンゴレ10代目(仮)じゃまだ力なんてないしね!)



「むくろ、こんどは計画的に食べような」

「はい^ ^でもまだ先は長いのでこれは大事にとっておきます!」

「……いや、だからそれがダメなんだって…( ;´Д`)」




END


実話です( ;´Д`)
我が家の冷蔵庫の中です( ;´Д`)

2016/07/08(Fri) 22:52 

◆ハネウマライダー 

「綱吉君、怖いです!もっとスピード落として下さい!!」




この時期にしては珍しく晴れ渡る青空に、澄んだ空気と爽やかな風に誘われて。

せっかく手に入れた何ヶ月振りかの1日半の休みを満喫すべく、後ろに愛しの恋人を乗せてかっこ良くバイクを走らせてるっていうのに。



「これくらい大丈夫だって、ってゆーか普通のスピードしか出してないし」

「普通の人にとって大丈夫でも君には危険なんですよ!君平常時はダメダメだってこと忘れてません?怖いです!」



肝心の俺の恋人ときたら、さっきから文句ばっかりだ。

お前が「海に行きたい」なんて言ったから、それを叶えてあげようとしてんのにそれはどうなの?って思うけど。



「もー、なんでそんな怖がるんだよ、何回も俺の後ろに乗ったことあるじゃん」

「あの時の僕は有幻覚ですよ?仮に君が横転してもどうとでもなったんです。

でも!今は生身でその上僕は修羅道も使えないんですから横転でもしたら最期です、即死ですよ、即死!!」



なんて必死で訴える骸に。



あまりに信用されてなくてちょっとだけ凹んだっていうのにさ。





「綱吉君!海です!海!」


海が見えてきた途端に大はしゃぎで身を乗りだし、


「っちょ、骸危ないって、バランス崩れるから大人しくしてろって。」

「そんなことよりもっとスピード出して下さいよ!君遅すぎます!」


ほんの数十分前まで怖いからスピード落とせなんて騒いでたくせに、今度はもっとスピード出せなんてせがむ現金な骸に苦笑して。


さっきまで怖がってたのは一体どこのどいつだよ?


そう言いたいのを我慢して代わりに。



「いいけど、飛ばせって言ったのは骸だからね?」

「…?綱吉君?」

「言っとくけど、途中じゃ降ろさないし、スピードも緩めてやんないから」



そう宣言して、アクセルを踏めば。




「綱吉君、怖いです!もっとスピード落として下さい!!」



スピード出せって言ったくせに、数十分前に何度も聞いた抗議の言葉を繰り返す骸に、だから一体どっちなんだよって心の中でツッコミを入れて、笑って。



「ダーメ!煽ったのは骸だろー?」



さっき宣言した通り、緩めるどころか逆にスピードを上げる。




「後5分くらいだから」

「もう!横転したら許しませんからね!」



そうすれば、言葉とは裏腹に、覚悟を決めたようにぎゅーっと俺にしがみついてきたから嬉しくなって。




「しないって、ったく信用ないなあ」



骸の温もりを背中に感じながら、




潮の匂いが混ざる風に誘われるまま、




(さて、海に着いたら骸と二人、何をしようか?)



海へと急いだ。




end


2016/07/03(Sun) 20:55 

◆君のために 

「……信じ、られません」

「っう、ゴメンって!!!」



僕の目の前にはその出来の悪い頭を両手でガリガリと掻きながら若干涙目で謝る綱吉。

そしてその彼の四方を取り囲んでいるのは、高く高く積みあがった、書類の束。



「朝確認しましたよね。今日の夜7時で大丈夫ですか?って」

「…うん」

「君、笑顔で言いましたよね。今日はこれだけ片づければいいから余裕だよって。」

「……うん」

「じゃあなんでその時から書類の束が一枚も減ってないんですか!っていうか微妙に増えてるし!!」

「だからゴメンって!今日は余裕だーって思ってたら、ちょっとさ、色々思い出しちゃって」

「何をですか」

「………えー、まあ、いろいろ?」

「だ・か・ら、何をですか?」



そう詰め寄った僕を見て、綱吉は出会った頃のように少し震えた。

もしかしたら僕も出会った頃のような黒いオーラを出してたかもしれないが、この際そんなことはどうでもいい、っていうか出るでしょう!

出て当たり前だ。不可抗力だ。僕は全く悪くない。



「…や、その、そーいえば山本に借りてたCD返すの忘れてたなー、とか。あ、この間草壁さんに相談があるって言われてたけどまだ話聞いてなかった、とか。先週届いたDVD観てないや!とか…」

「はあああ?」

「で、今日は書類こんだけ片づければいいから時間的に余裕あるし、せっかくだからそれも片づけておこうかなーって、ほら、ね?骸もあるよね?そーゆーこと」


うんうん、あるある、アハハハー、なんてグルグルと忙しなく目を泳がせて綱吉は乾いた笑みを零す。




「もういいです、あと1時間で君がこれを片づけれるとは思いませんから、僕は帰ります」

「ちょっ!待てって骸。終わらないとは言ってないだろ!!?」

「終わるわけないでしょう、こんな大量の書類」


彼に背を向け部屋を後にしようとすれば、焦ったように人の腕を掴み引き留めようとする彼に、寝言を言うのも大概にしろ!と、その手を振り払おう振り向いた僕は、そのまま固まった。



「1時間あれば余裕だ」



何の前触れもなく額に焔を灯した綱吉が僕を見ていて、

自信満々の声で、笑みで、そう告げたから。




-----------そして30分後。




「さ、行こうか、骸」

「……君、力の使い方完全に間違ってますよ、こんなことでハイパー化するなんて信じられません」

「んー、でもほら、平和過ぎて炎灯すこと滅多にないからたまにはこうやって力使わないと、使い方忘れそうだし、それにさ。」

「それに、なんですか?」

「愛する恋人のために使ってるんだから、全然間違ってなんかないだろ?」



なんて、どこか得意げに話す君に、ちょっとだけ嬉しかったのはきっと気の迷いだし、頬が熱いのだって気のせいだ。



「……次同じことしたら僕二度と君とデートしませんから」



けれどもしも万が一本当に熱を持っていたらいけないからと、頬を隠すように彼に顔を背けてそう宣言をすれば、



「大丈夫。俺の能力フル使用でお前のために頑張るから」



だから安心して?なんて、能天気な声がすぐに僕を捕らえて。

結局いつものように僕は、こんな勿体ない力の使い方をする男に、悔しいけれど絆されるのだ。




end

2016/07/01(Fri) 21:12 

◆父の日 






「ボス、これあげる」



いつものように晩御飯を持って黒曜センターへと赴き、クローム達の分のお重を渡した時、まるで交換するようにクロームが黄色のバラを一輪俺に渡した。



「え?お、俺に?」

「うん、感謝のしるし」



それだけいうと少し頬を染め、恥ずかしがるように去っていくクロームを見送ったあと




「え?むくろ、これ何?」




意味がわからず骸へと視線を向ければ、俺の餌付け作戦が功をそうしたのか、自らお重を並べマグカップに味噌汁を注いでいた骸が



「知りませんよ。クロームに直接聞けばいいでしょう」




興味なさそうに応えた後、何か思い出したように小首を傾げた。





「そういえば一か月ほど前は僕にカーネーションを一輪プレゼントしてくれましたね」


「………え、カーネーション?」


「ええ。その時もたしか感謝のしるしって言ってましたけど、」



今流行ってるんですか、そーゆーの?



そう俺に聞きながら、骸は好物の甘い卵焼きをおもむろに口に入れると、満足そうに頬を緩めた。


いつもだったら、そんな骸の様子を盗み見て、心の中でニヤニヤしてる俺も、今日に限っては、それどころじゃない!



「ね、それもらったのってもしかして5月の第2日曜日!!?」

「え?まあそうだったような気がします。それがなにか?」



なんでそんなこと聞くのですか?なんて言いながらも律儀に記憶を辿って答えた骸のその言葉に。




「……や、別に、ほら1か月くらい前っていったから、」



歓喜の叫びをあげたくなる自分をどうにか押しとどめて、ごまかすために味噌汁を勢いよく飲んで心を静めようとするけど



「あの…、何ニヤけてるんですか?」

「え、俺ニヤけてる?」

「ええ、気持ち悪いくらいニヤけてます」




流石に表情までは抑えられなかったみたいで、骸の奴すっげー俺のこと訝し気な目を見てる。



だけど、だけどさ。


ニヤけちゃったって仕方なくない?


だって、

5月の第2日曜日に骸にカーネーション渡して、

6月の第3日曜日に俺に黄色のバラをくれてたってことは、


つまりクロームにとっては骸がお母さんで、俺がお父さんって、ことでしょ?



(……骸がママで俺がパパ…、ま、マジか……)



なにこれ、超嬉しいんだけどっ!!クロームには俺たちそんな風に見えちゃってるわけ!!?

もしかしたらもしかして、俺ってば着実に外堀から埋めていっちゃってる!!?



なんて一人喜びに浸っていたら、




「…ボンゴレ。気持ち悪いから帰って下さい」




一人で百面相してる俺に、俺の未来のお嫁さんがとんでもなく辛辣なコトバを投げた。



(ひどいよ!未来の俺の奥さん!!)





end





「効果時間は30秒」のつなむくで父の日ネタ(笑)




2016/06/22(Wed) 21:31 

◆偽りのアイ 


俺の恋人は地球上で一番の美しく、そして一番嘘つきだ。


まるで呼吸をするように、嘘をつく。


綺麗な顔で、綺麗な声で、


甘い響きを持たせ、まるで睦言のように俺の心を痺れさせる。

なのにどんな時だってその言葉は、冷たい。



「ねぇ骸、俺のこと、好き?」


「もちろん、愛していますよ」


いつ何処で聞いても、迷うことなく躊躇うことなく返される言葉。

だけどその言葉もその微笑みも、俺へと向けられる全ては、全部作りモノで。

そこに心など欠片も詰まっていない。


10年前、一大決心をしてそれこそ死ぬ気で告白したあの日、お前はいつもの笑みをほんの一瞬崩しただけで、悩むことなく俺の想いを受け入れた。


あの時、お前の気持ちが自分に向いていないことをわかっていても、

お前の目的が他にあるってわかっていても、

ただ、他の誰かに取られる前に骸を自分のモノだと言いたいなんて、子供染みた独占欲と、


いつかは俺を見てくれるんじゃないかなんて、淡い期待を抱いてた。



あれからもう10年。



「じゃあ、キスして?」

「はい」



俺の言葉に躊躇うことなく落とされる唇。

すぐに離れようとするそれを引き止め深いものを要求すれば、それにも動じることなく応じてくれる。


部屋に響く水音と吐息と、時折漏れる声。

どれをとっても愛しあってるからこそ紡ぎ出せる音のはずなのに。

感情などこめられていないそれは、悲しいほど冷たい。


どんなに激しく求めても、

呼吸もままならないほど求めても、

染まっていたはずの頬はすぐにその熱を失い、

まるで何もなかったような笑みで、俺に微笑みかける。


「今日は随分と情熱的でしたね。」


なんて、余裕綽々に。



「なあ骸、お前本当に俺のこと好き?」

「もちろんです。大好きですよ」



じゃあ、俺から強いらなくても、たまにはお前からキスしてよ、


とか、


じゃあなんで俺たち、キスから先に進まないの?



とか、


そう時々問い詰めたくなるけど。


嘘でもいいからお前を俺のものだと公言して縛りつけていたい俺だって、言ってみれば同罪だから。


だから、俺とお前を隔てる、こんな薄い布一枚を剥ぎ取ることすら出来ずに俺は、


今日もただお前をきつく抱きしめるんだ。




「骸、好きだよ。お前は俺のものだから」



いつかこの言葉が必要なくなる日がくることを願って……。





(…でも俺はもう気づいてる。そんな日なんて永遠に訪れないことを………)








2016/06/05(Sun) 23:40 

◆期間限定ミント味! 



「おや、綱吉君、今日は早かったですね」



学校が終わって一目散に骸に会いに行けば、相変わらずソファに優雅に座った骸が、ポリポリとお菓子を食べながら、綺麗なオッドアイを雑誌から俺に向け、にっこりと微笑んだ。



「まーた骸同じの食べてんの?」



だけどその綺麗なオッドアイよりも俺は、骸が食べているものに目がいって。

思わず呆れたように声をかければ骸は首を傾げる。



「違いますよ。今日はポッ○ー。昨日はア○ロ、一昨日はキッ○カッ○、その前はダー○です」



よくもまあ何を食べたか覚えてるなあと思わず苦笑。

でも俺が「また同じの」って言ったの、そこじゃないんだけどなあ。



「全部その前に"ミント味の"がつくけどね」

「いいじゃないですかミント味。僕大好きなんですけど」

「えー、俺苦手」

「別に君は食べなければいいだけでしょう?」




苦手って言われたのが面白くなかったのか、俺の言葉にぷうと頬を膨らませて不機嫌な顔をする、俺にしか見せないその姿に笑って。




「食べないよ、食べないけどさあ」



その両頬を俺の両手で包んで上を向かせて、ちゅっと音をたててキスをして。

すぐに顔を離せば、物足りなさそうに自ら唇を合わせてくる骸に誘われるまま、もっと深いキスをすれば、いつのまにか俺の口いっぱいに広がるミント味に。



(食べないけど、結局ミント味、毎日味わってるんだよなあ)



夏の間中、これに耐えなくちゃいけないのかなあなんて、まだ今年の夏は始まったばかりでこんな悩みを抱えるはめになるなんて思ってもみなかったけど。



「……ん…、ふ」



ミント味よりも、骸の甘い声を毎日聞きたいとか、抱きしめてキスをして甘い時間を過ごしたいって欲求の方が、思春期真っ只中の俺には当然比較にならないほど大きいから。


早く秋になれ!なんて思いながらも俺は、毎日ミント味のチョコを頬張る骸と今日も、飽きずにミント味がなくなるまでずっと、

なくなったってずっと、

深い深いキスに夢中になるんだ。





俺のコイビトは今、期間限定ミント味!







end





ミント味大好きなんです!(私が!)
今、家の冷蔵庫の中も会社の冷蔵庫の中もミント味のチョコ菓子がいっぱいストックしてあります^^
だから骸様にもミント味のチョコ好きていてもらいたいなあと(笑)
でも、ミント味苦手な人、多いですよねえ。。。



2015/07/01(Wed) 21:18 

◆夏です 




「あー、夏だなあ」

「………は?」




日本支部の執務室。

ぽつり、そう呟けば、目の前のソファで俺のサインした書類に目を通していた骸が怪訝な顔をして振り向いた。




「……まさかそれ超直感とかいわないですよね」


「お前超直感を何だと思ってんだよ…」

「そうですねえ、勝手に人の思考を読み取る不法侵入能力、もしくはストーカー能力でしょうか」

「人を犯罪者みたいにいうなって!」

「クフフ、ですが何故いきなりそんなことを」




その顔には、こんな外の様子もわからない陽の光も届かない地下の、空調のきいた部屋で、ビシッとスーツを着込んだ状態で一体どうやって今突然"夏"を感じることが出来たのかと、ありありと書いてある。

常にポーカーフェイスの割には俺の前じゃなんでも顔に出すよなあ。

まあ、俺だけにしてくれるってゆーのが、嬉しいんだけど。




「だって本当に夏だろ?」

「まあ夏であることに違いはないですけどね」




でもこんなところに毎日いたら季節なんて感じないですけどねえ、


そう呟くとテーブルの上のチョコを徐に一つ口に運ぶ骸に誘われるように骸の向かいのソファへと移動して。



「綱吉君?まだ書類残っているでしょう?」

「うん、でもちょっと休憩。俺にもチョコちょうだい?」

「……10分前に休憩したばかりでしょう」



不服そうにしながらも差し出してくれたチョコを食べれば、口の中に広がる爽やかなミント味。




「んー、ミントの時期だね」

「そうですね、この時期はミントですね」




俺の言葉に、嬉しそうに相槌をうってまた一口チョコを食べる骸に小さく笑う。




(……ねえ、むくろ。本当にわからない?)




毎日外から隔離された陽のあたらない地下にいたって、

空調がきいた部屋にいたって、

年中ビシッとスーツ着込んでたって。



春はイチゴ

新緑の季節は抹茶

そして夏になればミント



お前が毎日俺の目の前で美味しそうに食べてるそのチョコで、俺が季節を感じてるってこと。




「夏だし、折角だし、たまにはお忍びで海とかいこっか。2人っきりで」

「それで溺れる君を僕は笑ってみていればいいですか?」

「なんで溺れる前提なんだよ、っつーか助けてよ」

「嫌ですよ。24歳にもなって溺れてる恋人なんて恥ずかしくて近づけません」

「じゃあ泳がないよ!」

「クフ。海に行く意味ないじゃないですか」

「ならお忍びで花火!」

「はいはい、そーゆーことはお仕事片づけてからにしてください」

「ちぇー」




他愛無い話をして、笑いあって。


骸と一緒にチョコを食べればほら口の中に広がるミントの味に、


今年も夏が来たことを再確認して、





(このミント味のチョコが売ってる間に、海も花火も絶対行くからね)




そう一人心の中で、至福の顔をしてチョコを頬張る恋人に向かって決意表明をした。







end



ミント味のチョコ菓子が出てくると夏になったって思うのです、私が(笑)

2015/06/24(Wed) 23:38 

◆魔法の数字 



6と9


ただの数字、なのに。


そんなただの数字に俺は、ある日魔法にかかった。

その2つの数字の羅列を見る度に嬉しくてたまらなくなっちゃう、そんな魔法。


最初は偶然見かけたその数字になんかじわりと胸の辺りが暖かくなって。


街中で、


学校で、


テレビの中で、


スマホの画面で。


偶然目にする度にどんどん嬉しくなっていって。


今じゃ偶然なんかじゃ満足出来なくてたったその2つの数字に俺の生活はほぼ全て、支配されてると言ってもいいくらい。



例えば俺の愛車のナンバーとか、


貸金庫のナンバーとか、


銀行のパスワードとか。


そうそう、俺の執務室の、俺しか開けられい金庫のパスワードだって実は……。


とにかく、6と9に溢れた毎日に小さな小さな喜びを噛み締めながら過ごしてるわけで。


そして今年も辿り着いた


大事な大事な、


俺が魔法にかかった、その日に。





「むくろ、誕生日おめでとう」

「ありがとうございます、綱吉」



俺のありきたりの言葉にも、嬉しそうに蕩けるように微笑んでくれる、俺をこんな可愛い魔法にかけた張本人に、




「世界の誰よりも愛してるよ」



そう囁いて俺は、




「僕は"世界の誰より"じゃなくて君の中で一番がいいです」

「そんなの、世界で一番愛してて、世界の誰よりもお前のこと愛してるにきまってるでしょ?」

「くふふ、連呼すると嘘くさいですね」

「嘘だと思うなら、確かめてみる?」




鼻先でくすくすと笑う骸にじゃれるように啄むだけのキスを繰り返しながら。




今年も一年、彼に誰よりも幸せが舞い降りるようにと祈って


今年も一年、彼に溢れんばかりの愛を注ぐことを誓って


今年も一年、俺に魔法をかけてと願って。


世界で一番甘いキスを、お前の歳の数だけプレゼントしてあげる。


だから、ねえ、むくろ。


お前が言う通り人は色んな生を何度も巡るのかもしれないけれど、


そのどれよりも今が一番幸せだって思えるようにしてあげるから、



来年も、


再来年も、


その次も。


俺がこの魔法から解けないように、


ずっとずっと、


6と9の2つの数字を見るだけで嬉しくなっちゃうように、


2人でずっと、


一緒にいよう?











end


2015/06/09(Tue) 20:47 

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