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□例えばこんなお得の感じ方
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「むくろ、なんか今日機嫌良いけど、何かあったの?」



俺がノートに向かって唸り声をあげて5分、未だ一問も解けていない状況にいつもの骸ならそろそろ皮肉の一つでも言ってもおかしくないのに。


大人しく母さんが用意してくれたアイスココアを飲みながらこれまた母さんが用意してたチョコを食べている骸の様子を覗きみれば、にっこにこだった。





例えばこんなお得の感じ方






「クフフ、そうですね。現在進行形でご機嫌です」


その上俺の質問に、滅多に見せないような、なんかちょっと京子ちゃんが見せるようなキラキラした笑顔でチョコを食べる姿に。


なんだよお前、いつもはツンツンしてるくせになんで突然そんな素直になっちゃってんのとか、

いつもは綺麗系なクセになんで急に可愛い系にスイッチしちゃってんのとか、ギャップにちょっと、いや多いにキュンとしちゃったじゃないか!

しかも現在進行形でご機嫌って、それってつまりあれだよね、俺といるのがご機嫌な理由ってことだよね?

何それ超可愛いじゃん!
俺もうこの問題解くの諦めて代わりにお前に手ぇ出したくなっちゃったんだけど、いいかな?いいよね?
今日は一応10分は勉強したし!(一問も解けてはないけどね!)

なんて、目の前でまだ可愛い笑顔を俺に振り撒きながらまた一粒チョコを口へと放りこんだ骸へと手を伸ばそうとした時、


「見て下さい、このチョコ!凄いんです!」


計ったかのような見事なタイミングで俺の邪な行動を遮るように骸がちょっと興奮気味に今まさに食べているチョコの箱を俺の目の前に差し出した。


「…へ?チョ、チョコ?」

「ただのチョコじゃありませんよ?見て下さい、ココ!」

「ミント?」

「はい!」

「ミント好きなんだ?」

「はい。でも、ただのミントじゃ、ないんです!」


そう熱の籠った説明をする骸がまだ見せつけるように俺の目の前に差し出したままの箱を見るけど、何が"ただのミントじゃない"のかわからず首を傾げれば。


「ほら、これ食べてみてください」


なかなか意味を理解しない俺に焦れたようにチョコを一粒俺の口元へと運んで楽しそうに笑う。


(えっ、なにコレ!もしかして"あ〜ん♡"ってやつ!!?)


初めて強いられた骸のその行動にまたもギャップ萌えしちゃった俺が、緩む頬もそのままに差し出されたチョコを口に含めばほんのりと広がるミント味。


「どうですか?ほんのり、ミント味が広がりませんか?」

「うん、美味しいね」

「では、もう一粒」

「へ?」


俺が食べ終わるのを待ってまたもう一粒差し出す骸。

いやなんでもう一粒?なんて疑問に思いながらも断ることも出来ずに誘われるまま食べれば。


「あれ?さっきと違う?」

「そうなんです!気づきました?」



やっと伝わったと満面の笑顔で骸が頷きながら、


「ほら、ココ見てください。このチョコ、一箱でWほんのりミントWとWすっきりミントWの2種類の味が楽しめるんです!」


凄いですよね!なんて自慢気に話してまた一粒食べた。


「ふうん、同じミントなのに違うんだ」

「そうなんです!お得ですよね?一つで2つ楽しめるなんて!」



相当2つのミント味が同時に楽しめることが嬉しいのか、もうずーっとほくほく顔の骸に思わず笑っちゃった俺に。



「君、もしかして今僕のこと馬鹿にしました?」



ぷう、と今度は頬を膨らませて不満気な顔したりするから、えっ、なになに!今度はそんな子供っぽいカオ見せてくれちゃうの?なんて、しつこくもまたキュンキュンしちゃって。



「まさか!俺もお得だと思うよ」



今度は骸に邪魔されることなく伸ばすことが出来た手でまだちょっと訝しげに見てる骸を捕らえてそのまま抱きしめる。



「ホントにそう思ってます?」

「思ってるよ、だって俺も今それを実感してるとこだから」

「……え?」


だってさ、


何時もはツンツンなのに急に素直になったり、

何時は綺麗系なのに急に可愛くなったり、

何時は俺より大人びてるのに、急に子供みたいになったり。




「っん……、ボン…ゴレ」



何時もは俺より余裕ありありなのに、キス一つで急にこんな恥ずかしそうな顔になったり。



考えてみたらオレ、今日骸が喜んでること、毎日骸で楽しめちゃってるってことじゃない?



「俺も色んな骸楽しめてお得だなーって」

「何ですか、それ。僕は僕ですよ」

「まあ、そうだけど」



俺の言葉に意味がわかりませんって、いつものツンツン骸に戻っちゃったことに苦笑すれば。



「でも、だったら僕もたまにはこれくらいの問題秒速で解いちゃうようなカッコ良い君が見てみたいですねえ」



なんて、何時のように余裕ありありのカオで、綺麗に微笑んで、皮肉を言うから。


さっきまでのギャップでほら、馬鹿にされてるのに俺ってば飽きもせずまたキュンキュンしちゃっただろ!




でもさ考えてみれば、

骸は1人で2つなんかじゃなく、3つも4つも楽しめちゃうんだから、


(キュンキュンしちゃうのはもう不可抗力だよなあ)




そう一人納得して。




また新しい骸が見れないかなって期待しながら、



いつの間にか俺の腕の中から抜け出してた骸へと、



懲りもせずに俺は、手を伸ばした。





(ねえ骸、次はどんな骸を見せてくれるの?)







end

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