キリリク
□彼と彼女の恋愛事情 ―side M―
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――――そして、今
綱吉君が僕のために用意してくれた色採り取りの食事と一緒にワインに舌鼓をうちながら他愛もない会話を続けること1時間。
(……後は計画通り、酔ったフリをして綱吉君に迫るだけです…。)
そう気合だけは入っているのに、実際は緊張するばかりで全く動けない。
せっかくのワインも食事も先ほどから全然味がしなくて、ただ隣の彼の様子ばかりが気になって。
しまいにはなんだか意識も朦朧としてきて
(………?なに、これ)
そこまできてようやっと自分の体の不可思議な異変に気づく。
生身の体となって初めてのお酒に、本当に酔ってしまって計画が実行出来なかったらどうしようと、多少の不安はあった。
あったけど、
(……何これ、身体が熱…い?)
明らかに酔っているのとは違う身体の異変。
どうしたのだろうと考えようとしても、上手く思考が働かない。
自分の身体の異変に戸惑っているうちに
くらり、
眩暈がして、手にしていたグラスが手から滑り落ちた。
「…あっ」
綱吉君の声に下を見れば、買ったばかりの真っ白なラグに広がる、紅色。
ドクン
その色に、
「……っ」
身体の奥で、
――――何かが、弾けた。
「……綱吉君」
じわじわと自分を蝕む熱を吐き出すように発した声は、まるで自分の声じゃないような甘ったるい響きをしていた。
彼に触れたくて、
触れてほしくて、
疼く身体をどうにかして欲しくて
ラグに気を取られている彼に僕を見て欲しくて、どうしていいかわからず距離をつめ彼の膝に跨る。
「…む、むく……ろ?」
僕のその行動に驚いたように僕を凝視する綱吉君にかまわず、顔を近づければ、その瞳の奥に見えた僅かな情欲の光に、熱が増す。
「…つなよし、くん」
焦れるようにさっきよりももっと甘く響かせた声で彼を呼び、わざと至近距離で動きを止め縋るように彼を見つめれば、応えるように抱きしめられて。
「……ん」
一度唇をあわせてしまえば、もう自分を制するものなんて何もなく。
後はただ、自分を支配する欲のまま、彼を求めて、彼を誘って、彼に縋って。
「…む、むくろ」
「…つな…よし、く…」
彼らしくない、切羽詰った声と欲に濡れた瞳で僕を押し倒す彼に、
「…ご…ごめん、俺もうっ、」
やっと叶うのだという喜びと、その先の行為に対する不安を噛み締めながら瞳を閉じた。
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